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2013年に発売された『統計学が最強の学問である』という書籍。ご存知の方も多いのではないでしょうか。統計学を知ることで、自分の人生を上手にコントロールできると謳われたこの本が流行したことで、一時統計学がちょっとしたブームになりました。

しかし、統計学という学問自体が割と難解なため、一般の人々が学ぶには少々ハードルが高い気もします。当時興味を持ったという方々も、あまり理解できずに通り過ぎてしまったのではないでしょうか。

そこで、統計学の入り口としてオススメしたいのが「プロ野球」です。

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しかし、なぜ「統計学」を知るのにプロ野球がいいのでしょうか? そんな疑問をお持ちの方は、このあとの記事を読んでみてください。

なぜ統計学は最強なのか?

さて、プロ野球と統計学。一見あまり関連がなさそうですが、実は近年、野球を統計学的な視点から分析し、選手の評価や戦略に活かす「セイバーメトリクス」という手法が一般的になっているのです。

簡単に言えば、現在の野球は統計学がかなり活用されているということ。これは興味深いですね。

そこで今回は、統計学者であり『9回裏無死1塁でバントはするな』『勝てる野球の統計学』などの著者である鳥越規央(とりごえ・のりお)さんにお話を伺いました。

170331_sportsnavi_live2.jpg鳥越規央(とりごえ・のりお)。統計学者。1969年6月26日生まれ。大分県中津市出身。1992年、筑波大学(第一学群、自然学類数学主専攻)卒業。1997年筑波大学大学院数学研究科修了。現在の研究分野は数理統計学、セイバーメトリクス、スポーツ統計学。各メディアにて、確率や統計に関する監修を行う。

── まず、統計学というのはどういう学問なのでしょうか?

鳥越:統計学自体は、19世紀頃に本格的に始まった比較的歴史の新しい学問です。簡単に言えば、それまで経験則で判断していたものを、しっかりとデータに基づいて判断しようというところから始まっています。

── 『統計学が最強の学問である』という書籍が話題になりましたが、統計学が最強である、という理由について教えてください。

鳥越:理由は2つあると思います。まずは、学際的な学問であるということ。農業をはじめ、医学や経済学、薬学、心理学など、あらゆるジャンルで用いられています。陸上の十種競技がアスリートの王様というのになぞらえて、統計学は学問のなかの王様といっても過言ではないでしょう。

また、統計学は数学のなかの一分野とされていますが、幾何学や解析学、代数学といった、数学の基本的なところをしっかりとマスターしていないと構築できない学問です。そういう意味でも、統計学は最強であるという言い方ができます。

野球を統計学的に紐解く「セイバーメトリクス」とは?

── 農業や医学、生物学などに使われてきた統計学ですが、近年はスポーツにも活用され始め、野球界では「セイバーメトリクス」と呼ばれています。このセイバーメトリクスについて解説をお願いいたします。

鳥越:野球を統計学で評価、分析することが「セイバーメトリクス」です。1970年代に、ビル・ジェームズという退役軍人が趣味として過去の野球のデータを分析し、『Baseball Abstract』という本を出版しました。これが、だんだん野球ファンの間で話題になっていき、注目を集めるようになりました。

── どのようなことが書かれていたのでしょうか?

鳥越:「送りバントは意味があるのだろうか」「盗塁やヒットエンドランは有効な作戦なのか」など、それまでの伝統的な価値観に疑問を投げかけるような内容が書かれていました。その本自体には詳細な統計学的分析については書かれていないのですが、考え方自体が斬新だったため、あとから統計学者たちがそれを証明していったという感じですね。

── セイバーメトリクスが有名になったのは、2000年代初頭にメジャーリーグの中でも貧乏球団だったオークランド・アスレチックスが、いかにして強豪チームになったかについて描かれた書籍『マネー・ボール』がきっかけでしたね。

鳥越:アスレチックスはお金を使って強い選手を獲得できなかったため、年俸が安くて良い選手を集めるために、セイバーメトリクスを使って徹底的に選手の能力を分析したわけです。

高打率の選手、ホームラン数の多い選手は年俸も高い。しかし、実は試合をより左右するのは打率ではなく出塁率*の高い選手ということが、統計による分析の結果わかりました。出塁率を左右するのは四球(フォアボール)。つまり、「選球眼」が高い選手が重要であるということがわかったんです。

首位打者やホームラン王は市場での評価が高く、年俸も高い。しかし、選球眼に特化した選手は比較的年俸が低い。そういった選手を数多く獲得していった結果、強いチームになっていったわけです。つまり、打率やホームラン数だけではなく、選球眼のような目立つ成績(指標)には現れない部分も重要視をしたということですね。

*その選手がどれだけの確率で塁に出ることができるかを表す指標。

送りバントや盗塁は無意味な作戦だった?

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── セイバーメトリクスが用いられるようになってから、それまでの野球で重要視されていたけれども、実は無意味だったというような作戦はありますか?

鳥越送りバントですね。ビル・ジェームズが最初に「送りバントの無意味さ」を証明したと言われていますが、日本では「それはアメリカの野球だから」という見解がこれまで多数でした。そこで私は、日本のプロ野球のデータを解析してみました。

すると、日本の野球においても、ノーアウト1塁の状態から送りバントをしてワンアウト2塁にしたところで、実は勝利確率は下がっていることがわかりました。これは『9回裏無死1塁でバントはするな』という書籍に詳しく書いています。

── 勝利確率というのは?

鳥越:野球におけるさまざまなシチュエーションで、その状況でこのチームはどれくらいの確率で勝てるのかということを計算して出したものです。ノーアウト1塁で送りバントを試みたときの勝利確率は、どのイニングにおいても下がってしまうということがわかりました。だとしたら、その作戦は無意味ということになりますよね。

── となると、送りバントはやるだけムダだということですか?

鳥越:唯一、有効なシチュエーションがあります。それは、同点で迎えた9回裏ノーアウト2塁。ここで送りバントをするとワンアウト3塁となって、犠牲フライでサヨナラ勝ちとなります。この場合は勝利確率が上がります。

これが実証されたのが、3/12(日)に行われたWBCのオランダ戦の延長11回表ですね。同点でタイブレークとなり、日本の攻撃はノーアウト1、2塁から始まりました。その状態の得点確率は60.4%なんですが、送りバントでワンアウト2、3塁にすると、得点確率は65.2%と、約5%アップします。実際、日本は鈴木誠也(広島)が送りバントをして1点を確実に取りに行きました。この送りバントは、有効な作戦でした。ただし、得点期待値は1.417点から1.335点へと下がります。

── 得点確率と得点期待値の違いは何でしょうか。

鳥越:得点確率はある状況において、1点以上入る確率のこと。得点期待値はその状況からの平均得点ですね。この場合は、1点を取る確率は上がりますが、2点、3点と大量得点する確率は下がっているということです。

このタイブレークのように、どうしても1点が欲しい状況では得点確率がアップする作戦を取るのは有効です。すでに、ソフトボールでのタイブレーク(ノーアウト2塁から攻撃開始)では、送りバントは常套手段となっていますね。

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状況別得点確率(2004〜2013年NPBを対象。引用元:『勝てる野球の統計学』(岩波書店)

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状況別得点期待値(2004〜2013年NPBを対象。引用元:『勝てる野球の統計学』(岩波書店)

── 盗塁に関しても、セイバーメトリクス的にはあまり意味がないと言われていますね。

鳥越:盗塁というのは、成功率が70%以上でないと意味がない作戦なんです。昨年糸井嘉男選手(オリックス→現阪神)がパ・リーグの盗塁王を取りましたが、成功数は53、失敗は17で成功率は75.7%です。同じパ・リーグの西川遥輝選手(日本ハム)は成功が41で失敗は5。成功率は89.1%となるので、どちらが盗塁の価値が高いかというと西川選手ということになります。

試行が多くて多く失敗するより、成功率を上げるほうがチームにとっては有効なんです。100%成功するという前提でなければ、できるだけ走らないほうがいいということですね。

ヒットエンドランはもっとリスキーな作戦です。ダブルプレーの可能性がありますから。ノーアウト1塁がツーアウトランナーなしになれば、当然ですが、得点期待値は下がります。

打率よりも重要視すべきは出塁率

── 冒頭でも話が出ましたが、近年出塁率が注目されていますね。打率と比べるとどんな点が重要なのでしょうか。

鳥越:野球において、塁に出る方法はヒットを打つだけではありません。四球で塁に出てもヒットで塁に出ても、得点につながる確率は同じです。

170330_sportsnavi_live14.jpg1984年から2013年シーズンにおける得点と打率・出塁率それぞれとの相関図(引用元:『勝てる野球の統計学』(岩波書店)。相関係数が「1」に近いほど、相関が強いとされる。

ここにチームの打率と得点、出塁率と得点の関係をそれぞれ2次元データに落とし込んでみたのですが、相関係数という統計学の数字によると、打率の相関よりも出塁率の相関の方が高かった。つまり、得点に関しては打率よりも出塁率を重要視したほうがいいということになります。

前回のWBCで、鳥谷敬選手(阪神)は開幕から13打席ノーヒット、打率0だったんです。一見すると全くダメですが、出塁率はなんと4割。四球でチームに貢献していたということですね。

セイバーメトリクスから見たよい投手とは

── これまでは打者の話でしたが、セイバーメトリクス的に高評価となる投手はどんな選手ですか?

鳥越:先発投手は勝ち星で評価されることが多いんですが、当たり前ですが打線が点を取ってくれなければ勝てません。勝ち星だけで評価するとなると、味方打線が弱ければ投手の評価も下がってしまいますよね。よく味方の援護がないのはピッチングのテンポが悪いからだ、などと言われることがありますが、それはあまり関係ありません。

そこで最近では、クオリティ・スタート(QS)という指標ができています。一般的には6回3失点ならば、先発投手としての役割をまっとうした=QSを達成した、ということで評価するというものです。勝ち星が少なくてもQSの数が多ければ、その投手は先発を任せられる選手として評価することができるわけです。

── 投手の実力以外の要素を排除して、正当に投手を評価しようということですね。

鳥越:最近は「FIP(Fielding Independent Pitching)」という指標があります。これは、被本塁打、与四球(敬遠除く)、死球、奪三振などを基にした指標です。つまり、味方の守備などが関与しない、投手の責任だけで構成されているということ。

FIP={13×被本塁打+3×(与四球+与死球−敬遠)−2×奪三振}÷(投球回数)
引用元:『勝てる野球の統計学』(岩波書店)

鳥越:防御率というのも、投手の力だけではなく味方の守備力などの要因が絡んでくるため、投手本来の実力による数値とは言えません。最たる例が阪神タイガースの投手陣ですね。防御率が悪いのですが、FIPを見ると悪くない。つまり、味方の守備が防御率に影響しているということなんです。

── 守備というのも、エラーの数などはわかりますが、それ以外の守備範囲の広さなどはわかりづらいですよね。足が早く守備範囲が広い選手がギリギリ打球に追いついたけどキャッチできなかった場合はエラーがつくけど、守備範囲が狭くてそもそも追いつけない場合はエラーがつかない、というようなことが実際には起き得ます。

鳥越:守備には「UZR(Ultimate Zone Rating)」という指標があります。エラーというのは公式記録員が判断するため、どうしても守備範囲によってゆらぎが大きくなってしまいます。UZRは、飛んだボールの位置からその選手の守備範囲を算出した指標です。飛び抜けて高いのが菊池涼介選手(広島)と坂本勇人選手(巨人)ですね。

── 打率やホームラン数、勝利数や防御率と同じくらい、これらの指標が一般的になったり、我々が自分たちで計算できるようになったら、野球がまた違った角度から楽しめるようになりますね。また、統計学的な思考力も養うことができそうです。

鳥越:そうですね。勝敗以外の見方ができるようになるので、野球がもっと面白くなると思います。

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セイバーメトリクスを通して観る野球は、これまでとはまったく異なるスポーツのように感じることでしょう。当たり前に感じていた戦術も、統計学見地からすれば無意味。打順の組み方や、投手交代のタイミングなどにも統計学の見方を取り入れれば、野球の楽しみ方はガラリと変わるはずです。

WBCはあと一歩という結果でしたが、今シーズンのプロ野球がもうすぐ開幕します。セイバーメトリクスの視点で見るプロ野球を、「スポナビライブ」で楽しんでみませんか?

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(文/三浦一紀、写真/木原基行)


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