習慣というのは、生活や人生においてかなり強力なものです。1日3回歯を磨くのが習慣の人は、歯を磨かずに寝るなんてことは想像できないでしょう。習慣のお陰で、健康な歯が一生守られます。仕事のある日は、毎朝コーヒーとドーナツが欠かせないという人は、習慣が体に悪影響を及ぼすかもしれません。良かれ悪しかれ、習慣にはある共通点があります。

それは、一度身についてしまったら、変えるのは恐ろしく大変だということです。

これは、カフェイン、ニコチン、アルコール、不健康な食事、運動、もしくは運動不足など、特に健康に関する習慣に言えることです。『The Resiliency rEvolution』の著者であり、ストレスと回復力に関する講演を多数行っているJenny Evansさんは、「悪い習慣が変えられないのは自分の中の原始人のせいだ」と言っています。

「人間の遺伝子は、1万年の間にほんの少ししか変わっていません」とEvansさんは説明します。人間の脳は、21世紀の現代社会になっても、洞窟の中に住んでいた時と同じ原始的な脳のままなのです。この現代人の中に潜む原始人のことを、Evansさんは"スニーキー・ピート"と呼んでいます。どんなに努力しても、すぐに昔の悪い行動パターンに戻ってしまうのは、このピートのせいだと言うのです。

ストレスを感じると、ピートはすぐに気分が良くなるカフェインやニコチンのようなものを探します。ピートは、できるだけ運動をせず、カロリーを摂取し、エネルギーを温存しようとします。現代の生活は、食べ物が豊富にあって、ほとんど運動する必要がありません。ピートにとっては理想的な環境です。

内なる原始人は、脳の先進的な部分よりも優位に立つこともあります。意志の力で、内なる原始人に何とか勝とうとがんばってみても、今のところ勝てていません。自制心はすぐに疲弊するという研究結果もあります。意志力は使った分だけ減っていく、頼りないリソースです。だからこそ、自己啓発は何十億ドルもの産業になっているのです。

では、一体どうすればいいのでしょう? 内なる原始人に勝とうとするのではなく、協同した方がいいのです。人間は、決まっている行動を劇的に変えることはなかなかできませんが、それは内なる原始人が変化をストレスだと見なしているので、間違った方法です。まったく運動をしなかった人が、週7日運動しようと思ったら、内なる原始人を呼び起こすことになり、失敗に終わります。

内なる原始人に気付かれないように、少しずつ修正するようにしましょう。ストレス反応が起こらない程度の変化にします。ポイントは「こんなの簡単過ぎてバカみたい!」と思うくらいの変化です。そうすれば、長期間その変化を続けることができます。例えば、運動をしたいと思っている人は、電話で話す時は毎回立つようにする、というような小さな変化を、Evansさんはクライアントに勧めています。

内なる原始人を起こさない別の方法としては、やるのが一番簡単なことを健康にも良くなるように調整する、というのもあります。夕食用の30cmのお皿を、25cmのお皿に変えると、何も考えなくても食事が22%減るという研究結果があります。飛行機に乗る時は、健康的なスナックだけをバッグに入れるというのもいいです。

それでもまだ、そんな小さな変化よりも、やっぱり大きな劇的な変化をしたいと思うのであれば、こんな風に考えてみてください。

20年間も劇的な変化を起こそうとしてきましたが、一体それで何か起こりましたか? ストレスは増え、体重も増え、前よりも不健康になりました。そろそろ、やり方を変える時ではないでしょうか。

One Remarkably Simple Secret to Changing Bad Habits Forever|Inc.

Minda Zetlin(訳:的野裕子)

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