誰もが毎日3~4時間は欲望に抵抗しています。驚くほど意志の強い人はどのようにして欲望や誘惑と闘っているのでしょうか?

意志力というのは、持っているとかいないとかいうものではありません。もちろん、人より自分を律することができている人はいます。人より欲望や誘惑に負けにくい人もいます。しかし、それは生まれつきそうなのではなく、欲望を抑える方法を知っていて、大事な時にそれを使っているのです。

意志の強い人というのは、人より意志力が強いのではなく、意志の力を最大限に発揮する方法を学んだのです。今回はその方法を学んでいきましょう。

1. 選択肢をできるだけ少なくする。

自制心を鍛えるための精神的エネルギーは限られています。1日のうちに選択しなければならないことが多ければ、それだけ脳に負担がかかり、楽な選択をしようとします(これを"えーい、どうでもいいや"症候群と呼びます)。そうすると、衝動的で無鉄砲になっていき、やってはいけないと分かっている選択をしてしまう上に、あたかも仕方がなかったかのように思い込みます。

実際に、賢い選択をするのに必要な精神的エネルギーを使い果たしてしまっているので、仕方がないことでもあります。だからこそ、選ばなければならない選択肢は少なければ少ないほど、より正しい選択ができます。

炭酸飲料をあまり飲まずに、もっと水を飲むようにしたいと思っているとします。そういう時は、机の上に水のボトルを3本常備するようにしましょう。冷蔵庫に飲み物を取りに行く必要も無ければ、何を飲もうか選ぶ必要もありません。

メールのチェックを定期的にしなければならないのが苦痛だとします。そういう時は、メールの通知機能をオフにするか、メールソフト自体をシャットダウンして、1時間に1回だけメールをチェックするようにします。もしくは、デスクトップのメールをオフにして、部屋の反対側に置いてあるノートパソコンで受信するようにしてもいいです。とにかく、メールをチェックしにくくして、頻繁にメールを見ないように工夫しましょう。

もっと賢い財テクがしたいと思っているなら、クレジットカードを引き出しにしまって、衝動買いができないようにしましょう。もしくは、ある一定額以上の買い物にはすべて2つの承認が必要になるようにし、常に他の誰かにも決断してもらわなければならないようにします(これで買うのを考え直すか、承認を頼むのが面倒になって、買い控えるようになります)。

選択というのは意志力の敵です。選択は、できるだけ簡単で便利な状態にしておきます。決断する時には意志力を必要とするので、意志力をまったく使わないでいい状態にするのです。

2. 夜のうちに選択して、明日に備える。

選択しなければならない時でなくても、正しい選択をするのが簡単なこともあります。例えば、明日着ていく洋服を今晩のうちに決めておけば、明日の意志力を無駄遣いせずに済みます(Bufferの共同創業者Leo Widrichは2本のパンツと5枚のシャツしか持たず、着るもので悩まなくて済むようにしています)。明日の朝ごはんを、前の晩のうちに決めておくのもいいです。明日の昼ごはんを決めて、その準備をしてしまうというのもありです。

前の晩にできる明日の選択はできるだけやっておけば、明日本当に必要な決断をする時のために、意志力を取っておくことができます。明日最初にやる仕事を決めておけば、それに必要な準備を前の晩できる、という具合です。

3. 一番大変なことを最初にする。

朝は精神エネルギーが一番充実している時です。全米科学アカデミーによる有名な研究で、仮釈放審査委員会では早朝に仮釈放の許可を出す可能性がもっとも高く、昼食前にはほとんど仮釈放を認めないということが分かっています。

裁判官の判断に、法的根拠以上に影響を与えている要素は、精神的な疲れです。決断することに疲れてしまっているのです。したがって、一番重要で大変な決断は早朝にするのがベストです。決断を済ませたら、最初に取り掛かるものを決めましょう。

4. エネルギー補給は頻繁に。

裁判官の判断のグラフを見ていると、ジェットコースターのように上がったり下がったりを繰り返しています。なぜなのでしょう? それは、休憩と食事を繰り返しているからです。昼食の後は、仮釈放の許可を出す確率が上がっています。午前中と午後の途中休憩の後も、同じような結果になっています。

意思力にはグルコース(ブドウ糖)が欠かせません。グルコースの値が低くなると、脳は働くのを止めてしまいますが、人間自体は働くのを止めません。長期的な成果よりも、短期的な報酬をより強く求めているからです。

健康的な食事や軽食を食べましょう。気分が良くなるだけでなく、より良い判断ができるようになります。そして、そのような決断によって、意志力がより磨かれていきます。

5. 長期的な目標のリマインダーを用意する。

会社をより大きくしたいと思っていても、精神的に疲れていると、ベストを尽くしていない自分を正当化しやすくなります。痩せたいと思っていても、精神的に疲れていると、ダイエットは明日からでいい理由を並べ始めます。社員とより良い関係を築きたいと思っていても、精神的に疲れていると、本当にやらなければならないことよりも、個人的なことを優先するようになります。精神的に疲れていると、間違った選択でも、楽な方を選びやすくなります

そのような衝動的な選択をしそうな状態から我に返るためには、リマインダーを用意しましょう。友人は、返さなければならない借金のことを忘れないために、お札のコピーをパソコンのモニタに貼っています。別の友だちは、体重が今よりも約20kg重い時の自分の写真を冷蔵庫に貼り、二度とこのような状態に戻らないように定期的に思い出すようにしています。

どんな時に、長期的な目標から離れるような、衝動的な選択をしてしまいそうなのか考えてみましょう。そして、その衝動的な選択をせずに、長期的な目標を達成するための道に戻るような、物理的なリマインダーを用意します。

もしくは、いっそのこと衝動的になるような状況を無くしてしまえば、意志の力はまったく必要としません。ソーシャルメディアを数分おきにチェックしてしまうのが止められないのであれば、アプリを削除したり、数時間シャットダウンをすれば、チェックすることができなくなります。

自分は意志が弱いと悩んでいる人は、まずはこの5つの習慣を取り入れるところから始めてみてはいかがでしょうか。

Jeff Haden(原文/訳:的野裕子)

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