「フルーツは1日に最低でも5人分は食べた方がいい」「水はとにかくたっぷり飲むこと」「食事はきちんと1日3回に分けるべき」など、これをしろ、あれをしろと、健康にまつわる格言の類いはたくさんあります。一体どれが真実なのでしょうか? Bufferの共同設立者であるLeo Widrichさんが、何を食べるのが脳に一番良いのかという疑問を、科学的に検証していたので、ご紹介していきましょう。

そもそも人間の体の組織は7年で完全に入れ替わります。私はこのことに人体の驚異を感じずにはいられません。体にとって何か良くないことをしてしまったとしても、その痕跡を消し去って、変えることができるチャンスが、科学的に与えられているということです。では、どのようにして変えればいいのでしょうか?

私たちが毎日口にしている食べ物に注意を向けてみましょう。食べ物や食生活を変えると、7年どころか日を追うごとに体に変化が表れ、生産性にも大きく影響します。

適切な栄養を摂取すると、平均よりも20%生産性を上げることができるWHO(世界保健機関)

■食べ物と脳の関係

一体どのくらいの栄養が血管を通って脳に送られているのかというのは、食べることに関する大きな興味の一つでしょう。脳に送られている栄養素は、集中力にも関わってきます。

私たちが口にする食べ物のほとんどは「ブドウ糖(グルコース)」に分解されます。人間にとってブドウ糖は燃料のようなもので、脳を覚醒させ、いつでも働けるような臨戦態勢にします。したがって、血液中には常にある一定レベルのブドウ糖が必要です。(人間にとってのガソリンのようなものです)

ここで最も大事なのは、私たちは血液や脳にどの程度のブドウ糖を送るのか、完全にコントロールできるということです。ある特定の食べ物はとても速くブドウ糖になります。ゆっくりとブドウ糖になる食べ物は、その代わり長持ちします。研究者の Leigh Gibson 氏は、ブドウ糖の最適な量を発見しました。

「血液中に循環するブドウ糖が25グラムの時に、脳は最も効率よく働きます。それはバナナ1本分の量にあたります。」

血液中に25グラムのブドウ糖を送るようにするのはとても簡単で、ドーナツを1個食べても、小さなボウル1杯のオーツ麦を食べてもいいです。どちらを食べても、短時間で見れば、脳の活動において実質的な違いはありません。

しかし、1日のうちの8時間で考えると、その違いはかなり大きなものになります。ドーナツを食べた後は、ブドウ糖はすぐに血中に放出され、約20分ほどしか覚醒状態がもちません。その後、ブドウ糖の値は急速に下がり、注意力が散漫になり、集中できなくなります。ガソリンを全部使い切るまで、思い切りエンジンを吹かしたような状態です。

一方オーツ麦の場合は、ゆっくりと糖分がブドウ糖になります。ブドウ糖の値は安定し、集中力や覚醒が高い状態でキープできます。もう一つの重要な要素となるのがレプチンの値です。レプチンは脳に満腹の信号を送ります。ドーナツの場合、満腹の信号が送られるのに、オーツ麦よりも長い時間がかかります。

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ドーナツとボウル1杯のオーツ麦の違いを表すのに、血糖インデックスの値もよく使われます。Franklin Instituteが提唱した、いわゆる「GI値」と呼ばれるものです。

低GI値の食品はゆっくりとブドウ糖が血液中に放出されます。ゆっくりとブドウ糖が放出されると、血糖値の振り幅を小さく抑え、脳の状態を最適化し、集中力を持続できます。

例えば、大豆食品はGI値が18しかないのに対し、白米は88もあります。(米LHの過去記事に「脳に効果的な食品の摂り方」がありますのでそちらもどうぞ)

■いつ、どこで、誰と食べるかが大事

これまで血液中や脳のブドウ糖の値がいかに大事かと力説してきました。一方で「いつ」「どこで」「誰と」食べるかということも、食生活に同じくらい大きな影響を与えます。つまりは、生産性や創造性にも影響を与えるということです。

まずは「いつ」食べるかというところから始めましょう。ここでは、決して空腹状態にしないようにするのが大事になります。「空腹は厳しい判決を下す」という言葉が、それをよく表しています。

お腹が空いていたり、朝ご飯を抜いたりしていると、次に何かを食べるまでの数時間は生産性がガタ落ちします。以下の研究を見てみてください。

クラス全員の子どもに、次の日の朝食を抜いてくるように指示しました。次の日の登校後、無作為に選んだ半数の生徒には、学校で美味しい朝食を与え、残りの生徒には何も与えませんでした。そして午前中の授業を行ったところ、朝食を食べた生徒はきちんと勉強し、おかしな行動をとらなかったのです。その後、2時間目の前に、すべての生徒に健康的なおやつを食べさせたところ、まるで魔法をかけたかのように、生徒間の行動に差がなくなりました。

食欲をコントロールすることも、とても大事なことです。私はお昼ご飯を食べて満腹になると、その後の数時間はとてもだるくなってしまうので、食事の量が多過ぎる時はいつも制限するようにしています。

食欲をコントロールする効果的なテクニックとして、小さなお皿で食事をするといいです。目の錯覚実験によると、以下の画像で右の円が小さなお皿だとすると、右の黒い円の方が大きく見えるから(中身が多く見えるから)です。小さなお皿で食事をすると、同じ量でも満腹感が得られます。毎日1時間生産性が上げたいのであれば、お皿を小さくするだけでいいのです。

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また、一緒に食事をする人間の与える影響については、Barker氏は次のように言っています。「太った友だちと食事をすると、たくさん食べます。ウェイトレスが太っていると、たくさん食べます。女性の場合は男性と一緒に食事をすると、あまり食べません。食事の種類が豊富だと、たくさん食べます」

■食べた物の効果を最大にするための3つのポイント

食べ物がいかに日頃のアウトプットに影響しているかということについて、基本的なことは分かったと思います。しかし、どうすればその知識を最大限に生かすことができるでしょうか?

◎冷蔵庫や戸棚の中の食べ物の配置を変える

「人間は目についた物を驚くほど口にしやすい」ということについては、以前もご紹介しました。戸棚を開けて最初に目についた食べ物は、5番目に見た食べ物より、3倍も口にしやすい、という研究結果もあるので、食べたい物は目につくところに保管しましょう。詳しくは過去記事を参照してください。

◎食べ方を一工夫する

この記事の最初の項目では、脳に必要なブドウ糖の量について紹介しました。過剰に摂取すると、数値は急激に上がり、その直後に急激に下がる、勾配のきつい山のようになります。かといって少なすぎると、脳が適切に働けなくなります。

そこで私が考えたのは、毎日の3回の食事の量を少し減らし(お皿を小さくして満足感も与えつつ)、脳が常にフルスピードで活動し続けられるように、食事の合間に2回健康的な軽食・おやつをとるというものです。この方法なら、基本的な食習慣をそこまで変えずに、脳を効率的に働かせることもできます。

◎脳に効く食べ物を摂る

脳に効く食べ物のリストがありますので、特に軽食やおやつの参考にするといいと思います。WHOが特に勧めているのは、ダークチョコレート、ナッツ、種子、魚です。他にも、ブルーベリー、生のニンジン、全粒粉、アボカドなども脳にいい食べ物です。

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■今食べている物は「孫」の生産性にも影響する

最後にとても驚いた事実をご紹介します。あなたが今食べている物は、今日のあなたの生産性に影響を与えるだけでなく、あなたの「子ども」や「孫」の生産性にも影響を与えます。食べている物が、遺伝子の配列に影響を与えます。それは、孫の脳の分子やシナプスにも影響を与えるということです。シナプスの接続を強化するような物を食べれば食べるほど、あなたの子どもやそのまた子どもの、生産性はより上がります。

The science behind how your productivity is chosen by what you eat | Buffer

Leo Widrich(原文/訳:的野裕子)

Image by Yuganov Konstantin (Shutterstock).