午後3時。仕事に集中できなくなってきました。Facebookのチェックがやめられません。生産性を高めるどころか、SMSやメール、おしゃべりな同僚を歓迎していますよね。これこそが「昼下がりのスランプ」です。1日のうちこの時間帯になると、脳が思いどおりに動かなくなってどうしてもダラダラしてしまうのです。

昼下がりに集中力が落ちるのはなぜ?

昼下がりにやる気が起きないのには、さまざまな理由があります。米ギャラップ社の調査によると、アメリカでは成人の40%が十分な睡眠を取っていません。十分な睡眠を取ることは大切な生活習慣で、いろいろと良い効果があります。心身のパフォーマンス向上もそのひとつ。十分な睡眠が取れていないと、脳は最適な状態で動いてくれません。

別の研究では、昼下がりの疲労感の理由のひとつとしてサーカディアンリズムを挙げています。つまり、頭脳のはたらきには、1日を通じて波があるのです。

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※画像内の文字はライフハッカー編集部にて表記

昼食に何を食べたかも関係してきます。「食後の睡魔」には科学的根拠があるのです。不健康なものを食べると、気持ちまで不健康な気分になるでしょう。

それから、午前中にハードな会議が連続した後は「抜け殻状態」になりますね。意志の力には限りがあるからです。起きてすぐなら、誰だって強い意志の力を持っていますが、日中に大小さまざまな決定をしていくうちに、少しずつ目減りしてしまうのです。

このように、昼下がりに集中できなくなる理由さまざまです。昼下がりのスランプに負けず1日をしっかり乗り切るため、研究で裏づけられたライフハックをいくつか見ていきましょう。

「質の良い」間食をする

決断を下したり、タスクに集中したりするたびに脳は疲れていきます。これは自我消耗と呼ばれます。司法判断に影響を与える要因についての研究では、「囚人の仮釈放が認められる確率」がもっとも高くなるのは、裁判官が食事休憩を取った直後だそうです。

E.J. Masicampo氏とRoy Baumeister氏による意思の力についての論文では、こんな実験が報告されています。被験者には、女性が喋っている様子を映したビデオを見てもらいます。ビデオは無音ですが、さまざまな語句が字幕で表示されます。被験者を2つのグループに分け、一方にはビデオの女性にのみ注目し、字幕を無視するよう指示しました。もう一方のグループには特に指示を与えませんでした。

このタスクの前後に、被験者の血中グルコース濃度を測定したところ、ただビデオを見ていたグループに比べて、字幕の表示を無視する努力を強いられたグループのほうは、グルコース濃度が有意に低下していました。

さて、上の裁判官の調査と、字幕つきビデオの実験に共通するキーワードは、グルコースです。これは糖分の一種で、私たちの頭脳のはたらきや意思決定にとって重要な役割を果たします。

意思の力が弱まっている時は、つい一番抵抗の少なそうな判断をしてしまいがち。裁判官の場合だと、囚人を仮釈放する判断を下すのはとても難しいので、現状を維持して仮釈放請求を認めない判断を選択してしまいます。私たち一般人の場合だと、Excelの作業に取りかかるよりは、Facebookのチェックを選んでしまいますよね。

では、意思の力を取り戻すにはどうすれば良いのでしょうか? 何か食べることです。ただし、糖分の種類には注意が必要です。Masicampo氏とBaumeister氏の研究によると、人工甘味料の中には、この点でまったく役に立たないものもあります。砂糖やデンプンをむやみに摂りすぎるのも良くありません。Baumeister氏が著書『意思力の科学』の中でおススメしている間食は次のようなものです。

自制を保つには、「GI値(血糖インデックス値)」の低い食品を選びましょう。たいていの野菜や、ナッツ類(ピーナッツ、カシューナッツなど)、生食用フルーツ(リンゴ、ブルーベリー、ナシ)の大多数のほか、チーズや魚、肉、オリーブオイルといった「良質の」脂肪を含むものなどです。

昼寝をする

実は、昼寝は充電に有効です。昼寝しないで仕事を続けても、半分しか残っていない思考力に頼ることになります。多くの研究で、昼寝は自然なことで、非常に有益であると裏づけられており、同様の報告は増えていく一方です。ほとんどの人は十分な睡眠を取れていないので、シエスタは理に適っていると言えます。

では、昼寝の長さはどのくらいが良いのでしょうか。正解を見る前に知っておいてほしいのが、「睡眠慣性(sleep inertia)」というキーワード。昼寝から覚めたあともボーッとした状態が続くのはこれが原因なのですが、職場ではこの状態は望ましくないし避けたいですよね。

昼寝を始めて10分以上たつと、睡眠慣性が始まってしまいます。というわけで、リフレッシュのための短時間の昼寝をお望みなら、「10分の壁」を超えないことが重要のようです。それ以上眠ってしまうと、起きたあともボンヤリした感覚が続き、しっかり目が覚めるまでにしばらく時間がかかってしまうのです。

究極の効率を求める人向けには、頭脳のはたらきを向上させるには6分間の昼寝で十分という研究もあります。

昼休みに運動する

食生活には気をつけているし、睡眠時間も足りているのに疲労感が消えないという人は、昼休みに体を動かしてみると良いかもしれません。疲労感の原因はおそらくストレスでしょうが、運動のさまざまな効能の中には、ストレスを減らすというものもあります。ストレスホルモンの濃度が下がる一方で、エンドルフィンが放出され、気分の向上や痛みの緩和につながるのです。

エベレスト・カレッジの調査によると、アメリカでは被雇用者の10人中8人までが仕事関係のストレスを感じています。また、ストレスや不安感は、睡眠不足の主要な原因のひとつに挙げられています。というわけで、就業時間中にエンドルフィンの助けを借りたほうが良い人は少なくないはずです。

どんな運動がオススメかですが、幸いほぼ何をやっても良い効果が得られるようです。

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※画像内表記

(左)静かに座っていたあとの脳

(右)20分ウォーキングしたあとの脳

調査/スキャンはイリノイ大学Charles Hillman博士が実施

Charles Hillman氏らによる研究では、20分間のウォーキングという簡単な運動でも、認知能力テストの成績は向上しうるという結果が出ました。上のスキャン画像は9~10歳の児童の脳の活動を示したものですが、ウォーキングによる認知能力の向上は、成人の場合も同様だそうです。

エンドルフィンの放出量を最大限まで増やしたいという人は、ストレスと不安感の軽減にもっとも効果があるのは激しいエクササイズだそうなので、そのアドバイスに従ってみてはいかがでしょうか。トレッドミルでジョギング...なんてヌルいことはやめて、全力で短距離走をするのです。エンドルフィンがたくさん放出され、より短時間でうれしい効果が得られるはずです。

誰かをほめれば、お互いにメリットあり

昼下がり。集中できなくなってきました。普段なら、こんな時どうしますか? たいていの人は次のようなことを試みるでしょう。

  • コーヒーを淹れる
  • Facebookの確認
  • 同僚とおしゃべり

言い訳も簡単に想像がつきます。「ちょっと別のことをして、仕事から気をそらそう。ほんの一瞬、充電するだけ。すぐにエネルギー全開で席に戻るんだから」ですよね? でも、最近の研究では、こうした「ちょっとした休憩」ではエネルギーは補充できないことがわかってきました。むしろ、かえってエネルギーを使うし、余計に気が散ってしまう悪影響まであるのだとか。

では、休憩したい時はどうすれば良いでしょうか? 休憩からできるだけエネルギーを補充するには、何か良いことで、かつ仕事に関係のあることをするのが良いそうです。例えば、手を休めて同僚のところに行き、「あの仕事、良かったね」と伝えるのは、トイレ休憩や1杯のエスプレッソよりも、エネルギーの補充に効果的なのだそうです。同僚のほうも、ほめられるとパフォーマンスが上がるので一石二鳥です。

というわけで、昼下がりに景気づけが必要になったら仲間の喜ぶことを言ってみましょう。同僚をほめればお互いにとってメリットがあるのです。

ココロとカラダを理解する

私たちはロボットではないので、8時間ぶっ続けで働くのは不可能です。休憩を取って充電する必要があります。食べ物、睡眠、運動などの力を借りてリフレッシュしましょう。意思の力や動機づけ、仕事への意欲のコントロール方法などについては、日に日に研究が進んでいます。

とはいえ、どんな研究よりも、自分自身の経験が一番確かです。どうすればうまく充電できるか、自分でいろいろ試してみましょう。どんな時に疲労感があって、どうすれば回復できたか、記録をつけるのもおススメです。

The Science Behind Why You Procrastinate In the Afternoon | iDoneThis

David Fallarme(原文/訳:江藤千夏/ガリレオ)