2012年10月23日公開記事を、編集・修正して再掲載します。

「昼寝は良いことだ」という研究結果が相次いで報告されています。昼寝は頭をリフレッシュし、創造力や知的能力を高めてくれるそうです。さらに健康や長生きにも良いのだとか。昨今の企業文化の中でも、昼寝は健康的なライフスタイルの一部として認められつつあります。この記事では、「昼寝の必要性の科学的根拠」や「科学者が薦める理想的な昼寝の方法」をご紹介します。

なぜ昼寝が必要か?

忙しい現代社会、わずかな昼寝の時間さえ確保するのは至難のワザです。それどころか、朝から晩まで頭も体も最大限のパフォーマンスを発揮するよう求められています。しかし、進化上の必然や生活習慣上の理由により、私たちの体は昼寝を必要としているのです。

■睡眠不足

昼寝が必要な一番の理由は? 夜に十分な睡眠がとれていないことです。人によって必要な睡眠時間は異なりますが、「米国立睡眠財団」によると、成人に必要な睡眠時間は7~9時間だそうです。ところが、「アメリカ疾病管理予防センター」が行った調査では、4000万人以上の労働者が6時間以下の睡眠しかとれていなかったそうです。睡眠不足が続けば、体が休息のために昼寝を欲するのも当然です。

■栄養不足

昼間に眠くなるもうひとつの理由は栄養不足です。偏った昼食のせいで午後になると血糖値が下がり疲労を感じるのです。主に2つの原因があります。食べる量が少な過ぎることと、タンパク質や繊維を十分に取らず、代わりに糖分や炭水化物を過剰に取っていることです。どちらにせよ、そうした偏った昼食の後は疲れやすく、夕方までに体力を消耗してしまいます。

■人体は昼寝をするように設計されている

人々は一般的に、夜間にしか眠りません。しかし、人体はそのように設計されていません(英文)。一日の覚醒リズムは体内時計によって管理されます。夜になるまで眠気を感じない人もいますが、午後になると急に眠くなる人もいるはずです。これは正常なことで、体内時計にプログラミングされていることでもあります。つまり、昼寝がしたくなるのは体内リズムの自然な表れなのです。

■進化上の必然

年齢が上がるにつれ、学習能力や注意力、集中力が低下します。昼寝はそれを補ってくれるものです。カフェイン入りドリンクを手軽に飲める現代には当てはまらないかもしれませんが、進化の歴史のある地点では、昼寝はサバイバルに必要なものでした(英文)。われわれの祖先にとって、反射神経のわずかな遅れや注意力の低下が生死を分けたに違いありません。たとえ15~20分の短い昼寝でも、サバイバルに必要な能力を回復してくれたはず。私たちが昼寝をしたくなるのは自然なことなのです。昼寝の研究

さて、あなたの身体が昼寝をしたくなる理由はわかりました。今度は昼寝の効用についてもう少し学んでみましょう。昼寝の有効性については膨大な研究があります。以下にいくつかをご紹介します。

■子どもにも昼寝は必要

ある研究によると、昼寝は年齢に関係なく有益だそうです。むしろ成長期の子どもにとっては必要不可欠とのこと。コロラド大学の研究(英文)では、「2歳半から3歳までの幼児は昼寝を怠ると、不安が増し、喜びや好奇心が減り、問題解決能力も低下する」そうです。子どもが強烈な眠気をもよおすのは、脳の構造やその活動性のためかもしれませんが、不安の増加、好奇心の減退など同様の問題が、昼寝をしない成人にも見られます。

■仕事中の昼寝は良いこと

GoogleやAppleなどいくつかの企業では、仕事中に昼寝をすることを認めています。科学もその有効性を裏付けています(英文)。10~15分の短い昼寝(パワーナップ)は、能率や生産性を高めるという研究結果もあります。企業にとって、昼寝はわずかな投資で士気や生産性を高めることができる優れたツールなのです。

■昼寝は学習効果を高める

カリフォルニア大学バークレー校の研究(英文)によると、講義を受けたり新しいスキルを習ったりする時は、事前に十分な休息をとっておくと学習効果が高まるそうです。ある実験によると、1時間の睡眠が学習能力や記憶力を劇的に向上させたとのこと(この結果は、以前にライフハッカーでも紹介しました)。睡眠は短期記憶をリセットし、新しい情報を記憶する準備を整えます。ひいては、学習効果の向上につながるのです。

■昼寝はカフェインより効果的

眠気覚ましにコーヒーを飲む? それより昼寝をしてください。カフェインより昼寝の方が覚醒作用があるとの研究結果(英文)があります。その研究では、「夜の睡眠時間を長くする」、「コーヒーを飲む」、「昼寝をする」のうち、どれが最も効果的かを調べました。結果は昼寝の圧勝! 昼寝は身体をリフレッシュさせ、覚醒効果もカフェインより長持ちします。

■昼寝は記憶力を強化する

昼寝の最もよく知られた効果は記憶力の強化です。ハーバード大学医学部の研究によると、昼寝(特に夢を見た場合)は記憶力と学習能力を高めるそうです。さらに、昼寝が途中で妨げられた場合でも効果があるようです。2008年の研究によると、わずか数分の睡眠でも、記憶作用が活性化することがわかったとのこと。

■昼寝は健康によい

昼寝が健康に良いというのも膨大な数の研究があります(英文)。ギリシャの成人を対象とした調査によると、30分間の昼寝を週に3回以上とると、心臓病死のリスクが37%低下するそうです。イギリスでの研究によれば、昼寝のことを考えただけで、血圧を下げる効果があるという話も。他にも、昼寝はストレスの軽減や、心臓病、脳梗塞、糖尿病、肥満などの防止にも役立つといいます。

■昼寝で創造性アップ

ニューヨーク市立大学の神経科学者たちは、昼寝が物事を大局的に見る目を養い、創造性もアップさせることを発見しました(英文)。この研究では90分間の昼寝を用いましたが、12分ほどの短い昼寝でも効果があるそうです。

■パフォーマンスを上げたければ昼寝をしてください

飛行機の操縦であれ、報告書を作成するのであれ、昼寝はパフォーマンスを向上させてくれます(英文)。航空宇宙局(NASA)のパイロットを対象にした研究では、フライト中に26分間の昼寝をすることで(もちろん操縦は交代して)、パフォーマンスが34%、注意力が54%向上したそうです。これこそが、世界のトップアスリートや天才的な頭脳を持つ人たちが昼寝をする理由なのです。

完璧な昼寝の取り方

あなたも昼寝を習慣にしてみようと思いましたか? それなら「理想的な昼寝」についての数々の研究が参考になります。

1. 睡眠時間を適切に

専門家によると、短い昼寝のほうが効果的とのこと。短い睡眠なら睡眠サイクルの第2段階までしか行きません。そこを超えて深い睡眠(徐波睡眠)の段階まで行ってしまうと、目覚めるのが困難になり、起きたあとも数時間は意識がもうろうとします。ですので、20分以内の昼寝が理想的なのです。

短い昼寝は日課にしやすいばかりでなく、気分や集中力、注意力、運動神経を十分に回復してくれます。もう少し長く時間が取れるなら、45分の昼寝も感覚処理や創造的思考を強化してくれるとのこと。さらに長く眠りたいなら、90分以上の睡眠をとるようにします。そうすれば全ての睡眠段階を経過して、気持ちよく目覚めることができます。

2. 静かで暗い場所を見つける

騒音と明かりは眠りを妨げます(英文)。昼寝に適した場所を探してください。騒音対策には耳栓をしたり、ホワイトノイズを聞いたりするとよいでしょう。明るさをカットするには部屋の照明を落とすかアイマスクを使ってください。

3. 横になる。

座ったままでも昼寝はできますが、眠るまでに時間がかかります(平均50%長くかかる・英文)。理想的なのは横になって寝ることです。その方が早く眠れ、時間も有効に使えます。

4. 昼寝の準備をする

昼寝の効果を高めたいなら、仕事のことをいったん忘れて、頭と心を静めることです。それには「瞑想」が効果的だと研究者たちは言っています(英文)。呼吸に意識を向け、筋肉をリラックスさせます(ライフハッカー式「瞑想の作法」も参考に)。

5. カフェインと組み合わせる

昼寝を効果的にするためにカフェインと組み合わせてみます。カフェインは飲んでから20〜30分後にその効果を発揮します。昼寝をする直前にコーヒーを飲めば、ちょうどいい時間に効果を発揮し、目覚めを助けてくれます。この方法は「カフェインナップ」と呼ばれています。英ラフバラ大学の研究によると、昼寝とカフェインの組み合わせは、そのどちらかだけをとった場合に比べて、心身をよりリフレッシュしてくれるそうです。

6. 計画的に昼寝をとる

極度の眠気を感じてイライラしたり注意力が散漫になったりする前に昼寝をするのが理想的です。昼寝を毎日のスケジュールに入れておくことで、仕事中や運転中に眠くなるのを防げます。

7. 目覚まし時計をセットする

寝過ごさないために目覚まし時計をセットしましょう。また、睡眠サイクルの観点からも適切な長さの昼寝をとることが大切(英文)。スッキリ目覚めるためにも、きちんと時間を決めて昼寝をしましょう。

8. 罪悪感をもたない

これまでにも述べてきたように、昼寝は自然かつ有益なものだということを科学が証明しています(英文)。勤務時間中だからといって昼寝に罪悪感を持つ必要はありません。また、他の人にどう思われるかも気にしないこと。ただ昼寝を楽しみ、生産性や活力、知的能力の向上という恩恵を享受すればいいのです。

The Surprising Science Behind Napping | Medical Coding and Billing

原文/訳:伊藤貴之)

This post originally appeared on the Medical Coding & Billing blog.

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