99u:ピンとこないかもしれませんが、休憩が本当に必要なのは、危機的状況が続いてストレスが多いときなのです。私たちは休憩を何かボーナスのようなもの、あるいは、暇なときにだけ許されるご褒美のように思っていて、難しい仕事をやり通すために必要不可欠なツールだとは考えていません。

リーダーたちは、責任のある仕事が多すぎて休憩なんてしている暇はないと言うかもしれません。でも、よく考えてみてください。米国大統領でさえ毎日のスケジュールの中に、絶対に侵せない神聖な時間を確保しています。朝の運動と、家族とのディナーの時間は決してなくしたりしないのです。

米紙「ヴァニティ・フェア」の記者で、オバマ大統領の「普通の1日」を24時間態勢で追いかけたトッド・パードン氏は、大統領が「スケジュールが詰まっているときでさえ、できる限り自宅で夕食をとるよう心がけており、それが彼の視点を切り替える貴重な機会にもなっている」ことを発見しました。

何をして過ごすにしても、ほんの10~15分間、休憩時間をとると、置かれた状況を新たな視点で見られるようになります。また、休憩は「闘争/逃走モード」から抜け出すチャンスにもなります。忙殺されているところにさらに追加の仕事が降ってきたり、締め切りが間近に迫っていたり、同僚との衝突を起こしていると、いつの間にかこのモードに陥ってしまいます。

以下に、私たちが過去の研究から学んだ、ストレスが多く不安に満ちた状況を乗り切るための6つの戦略を紹介します。

1. 「hanger」を避け、しっかりした昼休みをとる

「デスクランチ」の罠に落ちるのは簡単です。デスクで昼食をとれば昼休み中も仕事ができる、つまり、それだけ多くのタスクがこなせると人は言うのです。また、プレッシャーが高まっているときは、そもそも席を離れることさえ不可能だと感じてしまいます。しかし残念ながら、『ハーバード式「超」効率仕事術)』の著者であるロバート・ポーゼン氏の意見は違うようです。

昼食をサンドイッチで簡単に済ませば、時間を節約できて効率が良いと考えているとしたら、それも間違いではない。しかし、私たちが求めているのは厳しいだけのルールではない。機能的なルールだ。デスクから離れることでより生産性が上がるのだとしたら、デスクランチによる効率アップにはそれほどの価値はない。

お昼休みは食べ物を胃に詰め込む以上の目的があります。それは必要不可欠な小休止なのです。アート・マークマン博士(テキサス大学の心理学教授)は次のように説明しています。

少しでも目の前の問題から離れて別のことを考えれば、記憶がリセットされる。頭の中を占領していた考えから離れると、それまで抑制されていた記憶にアクセスできるようになる。そうすると、休憩のあと、記憶が思考に良い影響を与える。

ランチを食べる時間を自分で決められないのなら、あなたのチームがHALT(止まれ)ルールを徹底させるよう働きかけてください。

現在の状態や感情から離れられる場所に移動し、それから、意思決定を行うようにする。

H:空腹(Hungry)のときは、思考や代謝がうまく機能しない。

A:怒り(Angry)を感じているときは、心は不合理な感情で曇っている。

L:孤独(Lonely)を感じているときは、依存的で傷つきやすくなっている。

T:疲労(Tired)しているときは、何事もうまくいかない。たいていは空腹でもある。

こうした要素はすべて、有効な意思決定ができなくなる危険を作り出すものだ。

「Hanger」すなわち、「hungry(空腹)による怒り(anger)」のように、避けられるはずの状況で、後悔するかもしれない意思決定をするよりも、短い休憩をとるほうが良いのです。

2. 場所を変える

頭がパニックになっている、あるいは、創造力が枯渇していると思ったなら、散歩に出ると良いそうです。

スタンフォード大学の研究者たちは、歩くことで創造的なひらめきが促進されることを発見した。また、歩いている人と座っている人について、創造性のレベルを比較したところ、歩いているときのほうが平均で60%思考能力がアップすることがわかった。

大事なのは、歩いている時間を純粋に休息をとるために使うことです。携帯をいじりながらではいけません。

脳が完全に過負荷になり、休憩をとってリセットする必要があるとき、1人で歩くこと以上に良い結果をもたらすものはない。携帯もなし、ヘッドホンもなし、何も買わないように財布もなしが理想だ。長い散歩は気持ちをパワーアップさせるだけでなく、心のバッテリーを充電するための治療ツールにもなる。

短い散歩すら不可能なときは、仕事の中に組み込んでください。歩きながらミーティングをすれば、あなたもチームメイトも元気になるでしょう。

さまざまな会議のやり方があるが、あらゆる精神的な制約(完璧主義、心配、不安など)の克服には、10分間の散歩がかなり有効なことがわかっている。新鮮な空気。移り変わる風景が大切なのだ。

このような歩きながらのミーティングを、ブレインストーミングの仕上げに、バーの近くで開いても良いと、デザイナーのジェームズ・ヴィクトル氏はアドバイスしています。

私は毎日事務所に行き、昼の間はそこで働く。それから、4時か5時になると、行きつけのバーに行って、ビールを頼み、スケッチを仕上げにかかる。新しいアイデアを書き出すこともある。このプロセスのおかげで、毎日がすばらしく感じる。習慣のリズムもできる。私はスタジオでは頭を使う仕事はできない。スタジオは材料を組み合わせる場所だ。つまり手を動かす場所だ。だから、手を動かす仕事をしないときはそこを離れる。数えきれないほどの素晴らしい建築アイデアが事務所以外から生まれてきた。そうしたアイデアは自由で、仕事から離れた発想から生まれたものだ。 

3. 気持ちをしっかり保つ

強い不安を感じたり、神経質になっていたりしませんか?

そんなときは、瞑想をしてみましょう。これならどこにいてもできます。たとえば『Buddhify』などのアプリを使えばオフィスでも車の中でも瞑想ができて、冷静さや集中力、我慢強さを高めることができます。(必ずしも毎日やる必要はありませんが、何回か試してみれば、きっと毎日の日課に組み入れたくなるでしょう)

戦略コンサルタントのスコット・マクドウェル氏は、静かな場所を見つけ、座り、呼吸に意識を集中し、ほかに何もしないようにとアドバイスしています。

心臓の仕事は生命を維持すること、脳の仕事は考えることだ。それらはそのためだけにある。だから、無理やり頭の中を空にしようなんて思ってはいけない。そのかわり、意識がさまよい出したら、ゆっくりと呼吸に意識を戻す。思考の向き先を修正し、思考に耽溺しないことが瞑想のすべてだ。生産性はゴールではなく、悟りもゴールではない。ゴールはただ座って呼吸することだ。

静かに座っていられない人なら、ストレッチもストレス解消に効果的です。これなら体の緊張状態をじかに感じながら筋肉を緩めることができます。エンドルフィンが放出されるのも良い点です。ヨガは痛みを和らげ、ストレスを減らし、気持ちをしっかりできるように構成されています。ヨガ教師のジェン・ターディフ氏は、ヨガの動きが、デスクワークのダメージを打ち消すだけでなく、ストレスや不安をやっつけてくれることを教えてくれました。

4. 週末に小旅行に出かける

ストレスが最高潮になっているときこそ、もっとも休息が必要なときです。とはいえ、休暇をとるために追加の休みをとる必要はありません(どちらにせよそんな状況では不可能でしょう)。たとえ週末だけでも仕事から離れれば、心身を回復し、気持ちが燃え尽きるのを防ぐことができます。もしかすると、休暇は贅沢だとか、どうせ仕事に戻れば元のもくあみだと思っているかもしれませんが、それは違います。行動科学研究所とラドバウド大学の研究によれば、

なぜ休暇をとるべきなのかと尋ねることは、どうせまた疲れるのになぜ睡眠をとらなくてはいけないのかと尋ねることに似ている。長期的に健康を保つには、仕事に奮闘する時間と、回復のための時間を交互にもたなければならない。つまり、高いレベルの「健康と幸福」を維持するためには、休暇に行かなかったり、年に一度だけ長い休暇をとったりするよりは、短い休暇を何度かとるほうが合理的なのだ。

米紙ニューヨーク・タイムズの報告によれば、私たちは、旅行に出かける前からすでに休暇による恩恵を受けていると言います。

オランダ、ブレダ応用科学大学の観光研究講師であるJeroen Nawijn氏は次のように話す。「幸福の大部分は休暇旅行への期待からやってくる。あなたは、何度も旅行に出かけ、幸福を感じる機会を増やすべきだ。たとえば、2週間の休暇があるなら、1週間ごとに分ける。また、期待効果を高めるために、旅行について家族で話しあったり、オンラインで議論したりしても良い」

また、くれぐれも仕事から本当に離れることを忘れないでください。ベンチャーキャピタリストのブラッド・フェルド氏は、インタビューの中で、休暇のもっとも重要なポイントは完全に仕事を忘れることだと断言しています。

私が実践し、もっとも効果があったのは4半期ごとに1週間の休暇をとることだ。エイミーと私はどこかへ出かけるために土曜日に空港へと向かう。パソコンは家に置き去りにし、空港に着くとスマートフォンを彼女に渡す。スマートフォンは次の土曜日、家に帰ったときに返してもらう。私たちはいつもどこかへ旅行する。たいていはリラックスできる場所だが、じっとしているよりはいろんな場所を回ることが多い。自分の時間は100%リラックスすること、エイミーと一緒に過ごすことに使う。たいてい旅行中の1日は、本を読むことにあてる。私たちはたくさん会話し、エンターテイメントもたくさん楽しんで、毎朝遅くまで眠る。だから旅行から戻ると、いつもリフレッシュしている。

5. パワーナップ(仮眠)をとる

不幸なことに、多くのオフィス文化ではいまだにタブーですが、パワーナップをとれば、とても効果的に心身を再起動することができます。フリーランスだったり、フランクな雰囲気のオフィスで働いていたりするなら、ぜひ試してみてください。精神の疲れは肉体の疲れにつながります。数々の研究が、コーヒーで無理に目を覚ますより、少し眠るほうが効果が高いことを示しています。私たち自身、パワーナップを1週間試しましたが、昼寝はカフェインよりはるかに効果があることがわかりました。

20分のパワーナップはタイピングやピアノ演奏などに必要な、注意力や運動学習能力を高めてくれる。研究によれば、長めの昼寝は記憶力や創造力を高めるようだ。徐波睡眠(30分~60分の睡眠)は語彙を記憶する、道順を思い出すなどの判断能力の向上に効果がある。レム睡眠(60~90分の睡眠)は脳内で新しいつながりを作り、クリエイティブな問題解決において大きな役割を果たす。

眠れるかどうかが不安なら、人が入眠までにかかる時間は平均15~20分である事実を踏まえ、昼寝の時間にそれだけの余裕をもたせてください。あるいは、アンドリュー・ワイル博士が勧める「4-7-8呼吸法」を試すのもいいでしょう。

  1. ヒューと音を出しながら、口から完全に息を吐き出す。
  2. 口を閉じ、心の中で4秒数えながら、鼻からすばやく息を吸い込む。
  3. 息を7秒間止める。
  4. ヒューと音を出しながら、口から完全に息を吐き出す。このとき、心の中で8秒数える。
  5. これで呼吸1セット。また息を吸い込むところから始めて、この呼吸をさらに3回繰り返す。つまり、全部で4回呼吸する。

また、ちょっと変わったやり方でリフレッシュしたいのであれば、コーヒーナップを試してみましょう。レポーターのジョセフ・ストロンバーグ氏がやり方を説明しています。

コーヒーは急いで飲む必要がある。コーヒーが胃腸を通り、血液に吸収される前に、十分な睡眠時間を確保するためだ。飲み終わったらすぐにベッドに入る。そして、必ず20分以内に目覚めることだ。そうすることで、睡眠の深い段階に入るのを防ぎながら、ちょうどカフェインが脳に到達するタイミングで目を覚ますことができる。

6. 朝の日課を決める

ストレスフルな1日を始めるのならば、出勤前の10~15分だけでも、朝の儀式を行って心を落ち着かせると良いでしょう。

ステップ1:仕事のメールやソーシャルメディアをチェックしないこと。ドイツの研究によると、Facebookはストレスの原因になることが多いそうです

長い間、嫉妬の感情を抱き続けていると、自分を肯定できなくなり、不満やひきこもりに陥ったり、抑うつや幸福感の低下を引き起こしたり、メンタルの悪化につながる。嫉妬がからむ事件の20.3%はFacebookが引き金となっており、その対象となるのは、「旅行とレジャー」「人とのつながり」「幸福」に関する投稿だ。これは、オフラインでは「旅行とレジャー」「仕事の成功」「技能・能力」が嫉妬の対象となるのと比べて対照的である。

ステップ2:起業家のジェイソン・ズーク氏が勧めるように、10~15分間、幸せを感じることだけをする

コーヒーができるまでの時間、私は携帯を見たりノートパソコンを開いたりするかわりに(どうせネガティブなものを見つけてしまうのだ)、コミックを読んで楽しい気分に浸る。この、10~15分間は楽しいことだけをする。そうすると、私の1日はポジティブな気分から始まり、それはつらい1日から私の気持ちを守ってくれる。もしネガティブな気分から1日が始まったとしたら、その日はずっと、ポジティブになるための苦しい闘いを強いられるだろう。

また、朝に20~30分ほどエクササイズをすれば、1日のストレスを軽くすることができるようです。

20分間自転車に乗れば人生の問題がすべてなくなるわけではないが、習慣的なエクササイズは、不安やストレス、怒り、フラストレーションを解消するのを助けてくれる。また、エクササイズは悩み事を忘れる気晴らしにもなり、不安や抑うつなど精神的・感情的問題を引き起こす、ネガティブな思考のサイクルから脱して、静かな時間を過ごす助けにもなる。エクササイズは、精神にエネルギーを与え、気分を改善する強力な化学物質エンドルフィンを放出する。エクササイズは、軽度から中程度のうつ病に対して抗うつ剤と同じくらい効果があり、もちろん、副作用もない。うつ病の緩和だけでなく、研究によると、エクササイズを習慣にすることで、再発も防止できるそうだ。

さて、プレッシャーに押しつぶされそうなとき、あなたはどうやってストレスに対処しますか?

6 Ways to Quickly Restore Sanity to Your Day|99u

Sasha VanHoven(訳:伊藤貴之)

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