人間の健康と幸福の基礎となり、厳しい状況すら乗り越える強さを身につけるための重要な習慣がいくつかあります。それらの基礎的な習慣は、知性、身体、そして魂といった、人の中心を形づくる要素を育みます。もし、自分がスランプに陥っているとか、スランプに近づいていると感じているのであれば、自分を成長の軌道に乗せるため、これらの習慣を身に着けるよう、努力してみてはどうでしょうか。

人生はときに厳しいものです。私はついこの間、誰1人知り合いのいない新しい町に引っ越しました。私は作家ですので、仕事を通じた社会との交流はありません。バーやコーヒーショップに足を運ぶこともなかったので、人間関係を作りあげるのは難しいことでした。このような孤独な環境に置かれれば、みじめな悪循環に陥る可能性もありましたが、これからお話しするような理由で、そうならずにすみました。

何かが上手くいかない時も、基礎的な習慣のパワーがあれば違った形で成功することができるのです。これらを身に着けていれば、恵まれない環境にあっても、非常に簡単にそれを振り払うことができ、我慢強くもなります、これは人生で最も重要なスキルのひとつでしょう。

以下にあげるのが、健康と幸福、そして回復力を伸ばすために誰もが必要とする、4つの基礎的な習慣です。

1. 運動

運動は、抑うつを防ぐ最良の薬です。身体への恩恵は明らかですが、運動は精神面にも恩恵をもたらすことは、疑いようがありません。

運動は体内で有益な化学反応を起こし、脳の血流を増加させます。歩いていたりランニングをしていると、いろいろなアイデアを思いつくことが皆さんにもおありでしょう。それはおそらく、この増加した脳の血流が神経接続をより活発にしているためです。血流の増加が運動の魔法の鍵なのです。

発達分子生物学者 John Medina氏は、著書『ブレイン・ルール』においてこう語っています。「十分な血流がなければ、あらゆる組織は飢えて死んでしまうでしょう。脳も例外ではありません。(中略)運動を多くするほど、より多くの組織に栄養を与え、より多くの毒素を排出することができます。このようなことが全身で起こるので、運動で人間のあらゆる機能を高めることができるのです」。

運動は、人が身につけられる中でも最も重要な習慣だと考えています。心身への恩恵をすべて合わせたら計りしれないものになるでしょうし、それが人生におけるほかの要素にも良い影響を与えることを考えると、さらにその重要度が増すといえます。運動する人は、人生の困難な局面において、より強靭でいられます。そのひとつの理由は、ストレス発散です。つい先日、私はあることでひどく怒っていましたが、そのエネルギーをトレーニングに注ぎ込みました。ジムから出る頃には、身体も心もとても気持ちよくなっていました!

2. 読書

なぜ読書に割く時間が減っているのか。ほかにいろいろなエンターテインメントや学習方法があるためといった理由くらいしか考えられませんが、読書の重要性が現代社会において過小評価されすぎているのは確かです。長き歴史にわたり、読書は精神を豊かにし、新しい情報を見出し、今の自分より偉大になるために学ぶための基礎的なな方法でした。私の意見では、ものを読む手段において、本は最良の選択肢であり、得られる影響は最大です。

企業のCEO(社長)は平均して、1年に60冊、または、毎週およそ1冊の本を読んでいると、どこかで読んだことがあります。ビジネスの成功と読書量の相関は、偶然ではありません。多くの本を読むことで得られる恩恵は、たとえば、

・よりおもしろい人になれる(たとえば、会話など)

・より賢くなる(読書は脳をさまざまな方法で鍛えてくれます)

・知識が増える(読書から学ぶことができる情報量の多さは驚異的です。速読ができるなら、なお良いです!)

・より幸せになる(読むものにもよりますが、エンターテインメントとして読書を楽しむこともできますし、人生を良くする大事な考えを得られることもあります)

・特定の分野で成果を上げる(筋肉を増やす本を読んでから、私はその知識を使って、数ヶ月で筋肉を約7kg増やすことができました。世の中には、皆さんがしたいと思っていることが何であれ、それを手助けしてくれる本がいくらでもあります)

これらはすばらしい恩恵です。それに加えて、1冊の本がものの見方やその後の人生を完全に変えてくれる可能性を思えば、それだけでも、たくさん読書をすべき理由になりますね!

3. 感謝

スランプにはまってしまうというのは幻で、自分に呪縛を掛けているだけです。バスケットボールの選手がシュートを連続で失敗すると、自他共に「乗れていない」とか、「調子が悪い」というレッテルを貼ってしまうのです。実際は、シュートが入る確率は、冷静さを保ちさえすれば毎回同じはずです。本人がスランプだと思って集中力を失ったりしない限り、スランプなど存在しないのです。

今朝、いつもと同じように起きたとき、皆さんにはより充実した時をすごし、新たな機会をつくり、目標に向かって前進し、そして幸せになるチャンスがありました。実際にそれができたかどうかは問題ではありません。ここで言いたいのは、今この瞬間というのは、常にニュートラルだということです。過去は、良くも悪くも2度起こることはありませんから、反芻していても得られるものはありません。

今の瞬間は過去とは関係ないのですから、自分の人生でうまくいっていることに対して感謝すべきです。この簡単な行動が、人生を生き生きしたものにして、幸せを感じさせてくれます。事実、いくつかの調査によって、幸福であることに最大の影響力を持つのが、感謝の気持ちだとわかっています。

「感謝の訪問を行った参加者は、調査全体にわたり、最も大きな好転を示していた。」

(Seligman, Martin E. P."Positive Psychology Progress: Empirical Validation of Interventions." American Psychologist 60.5 (2005))

注:上記の「感謝の訪問」とは、参加者に、感謝に値する人に対する手紙を書いてもらい、それを手渡しで届けてもらったことです。

感謝を習慣づけるというのは、自分の人生において素直に感謝できることに注目するということです。この調査では、「感謝の訪問」をして、手紙を届けたグループに、幸福感の変化が最も大きく起こりました。彼らは、感謝していることについてただ考えただけでなく、実際にその感謝を形にしています。多くのことにおいて同様ですが、行動することは、ただ考えるよりも大きな影響を与えるものです。

ただしここで、重要な注意点があります。その後のフォローアップ実験によれば、感謝の訪問をした参加者は、1週間後、1カ月後は、より幸福な状態でしたが、3カ月後はそうでもなくなっていました。

同じ調査において別のグループは、「毎日、3つの良い出来事と、それが起こった理由」を書き留めることを習慣づけました。彼らの幸福感の増加はより穏やかでしたが、その増加は6カ月に渡り続いたのです!

ここからわかるのは、1度きりの出来事よりも、習慣の方が力を持っていることです。心を打つ感謝の手紙を届けることは、より派手でわかりやすい行動ですが、長続きする変化を生んだのは、毎日の感謝でした。ひとときの輝きはすばらしいですが、人生をよりよくするという点でいえば、基礎的な習慣には及ばないのです。ですから、幸福を構成する要素であると証明された感謝という行動を、生活の中での習慣にする必要があるのです。

4. 瞑想

面白いことに、シンプルなことが1番効果的だったりするのです。瞑想もその中のひとつであり、いろいろな人の人生を変えてきました。瞑想で心が休まり、ストレスを解放してくれるのは、自分の呼吸に精神を集中するというシンプルさによるところがすべてでしょう。

科学者は、「2万~4万時間」もの瞑想をしてきた修道士の脳を調査しました。結果ですか? 彼らの脳の幸福感と関連がある分野が、クリスマスツリーのように光っていました。この方法で評価された彼らの幸福感は、実際に規格外れの高さだったのです。

瞑想は、感謝と対になるものだと思います。感謝により、人の心はポジティブなことに集中しますが、瞑想はネガティブなことから心を遠ざけてくれます。もし、修道士のように1日に数時間の瞑想をすれば、自分の持っている問題はあまり重要でなく感じられるようになるでしょう。これはとても重要なことです。なぜなら、私たちが悩んでいる問題のほとんどは、自分でどうにかできるものではないからです。瞑想により、それを解放することができます。

瞑想の効果で、もう1つ私が気づいたのは、ペースを落とすことができるということです。私たちはテクノロジーの時代を生きていて、そのために、ほとんどすべてのことが、以前より早く進むようになっています(コミュニケーション、食事、清掃、など)。このような早いペースが人の精神状態にも影響しているようで、不安やあわただしさの原因になっています。瞑想は、生まれつき持っているシンプルでゆっくりしたこと、すなわち呼吸に集中することで、これらの精神状態を元に戻してくれるのでしょう。

これを実行するかは、自分の時間の過ごし方次第です。やることすべてが速く、急かされているような人であれば、これを取り入れない手はないでしょう。瞑想は、早いペースの人生を送っている人にとって、精神のバランスを保つすばらしい方法です。

4 Foundational Habits Every Person Needs|PICK THE BRAIN

Stephen Guise(原文/訳:Conyac

Photo by Shutterstock.