腕を上げる度に腋が濡れていないか心配するのはもうやめましょう。やたらと汗をかく人や腋汗で服を濡らしてしまう人、汗による衣服のシミに悩まされている人たちの生活を、少し楽にしてくれるヒントをいくつがご紹介します。

汗をかき過ぎる理由

まず第一に、汗をかくという作用はまったく健康的で、身体に有益な反応です。そして、汗をかかない人はいません。人は汗をかくことにより、体温を下げたり、体内の毒素を排出したり、塩分濃度を維持したりします。ですから、汗についてあまり心配し過ぎる必要はありません。

汗腺は全身の皮膚に分布していて、その数は500万個に上ります。そして、大半の発汗作用は、2種類の汗腺の働きによるものです。主に腋の下に分布しているアポクリン腺と、数が多く全身に分布しているエクリン腺です。ブリタニカ大百科事典の説明によると、汗が引き起こす厄介な問題は、大抵の場合、アポクリン腺が原因になっているそうです。

アポクリン腺は、通常は毛包に付属しており、脂肪分を含んだ汗を汗腺の小管に絶えず分泌し続けています。汗腺の小管は精神的ストレスによって収縮し、脂肪分の多い分泌物が皮膚に放出されます。すると、分泌物は皮膚表面のバクテリアによって分解され、不快な匂いを放つ脂肪分の多い酸性の物質になります。

デオドラントや制汗剤を全身ではなく腋の下だけに付ける理由は、大半のアポクリン腺が腋の下に集中して分布しているからです。一方エクリン腺は、上昇し過ぎた体温を下げる必要がある時に活発化します。体を動かしたり、暑い場所にいる時に感じる汗は、大半がエクリン腺から分泌されたもので、こちらのほうは不快な匂いがほとんどありません。汗をかき過ぎる主な原因としては(気温が高過ぎるという理由以外では)、次のものが挙げられます。

  • エクササイズ:エクササイズによって体温が上昇すると、熱くなった身体を冷やすために汗が分泌されます。
  • 緊張:緊張を感じると、いくつかの種類のホルモンが体内で大量に分泌され、直面している恐怖への対応として戦うか逃げるかの選択を自身に迫る「戦うか逃げるか反応」を引き起こします。この状態になると心拍数が上昇し、体内のエネルギーを燃やし始めるため、身体を冷やすために再び汗が出てきます
  • 多汗症:ハーバード大学医学大学院の解説によると、多汗症とは、手のひらや腋、足、股間などで過度の発汗が起きる症状を指し、全人口の1~3%がこの症状に罹っているそうです。本質的に、多汗症の人たちは、正常とされる水準よりもはるかに大量の汗をかきます。
  • 感情:怒りや興奮、ストレスなどといった強い感情は、汗腺の活動を促す場合があります。緊張によって汗が出る時と同じような原理で、例えば、運命の人に出会った時や、お気に入りのジェットコースターに乗るため順番待ちで、ついに行列の先頭まで来た時などに体験する強いポジティブな感情によって、汗の出る量が急激に増加する場合があります。

汗の量を過剰に増やす要因としては、これらのほかに、例えば遺伝子なども挙げられますが、あくまでも上記の4つが主な要因になります。

過剰な発汗を防止する方法

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制汗剤やデオドラントは、汗に関する問題に対してある程度の効果はありますが、どんな場合にも完璧な効果が得られるわけではありません。汗でびしょ濡れになりやすいことで悩んでいる人は、制汗剤を使いましょう。特に、夜寝る前に付けるのがオススメです。また、汗による体臭に悩んでいる人は、デオドラントを使うのが効果的です。なぜならデオドラントには、汗に含まれる成分を食べて不快な匂いを発生させるバクテリアを殺し、身体を良い香りで包む働きがあるからです。

とは言え、制汗剤だけでは対策として不十分な場合があります。日頃から過剰な発汗と戦っている人には、避けるべき食品がいくつかあります。

まず、コーヒーを飲む量を減らしてみましょう。カフェインには、中枢神経系に作用して発汗を促進させる働きがあることは、例えば専門誌『Journal of Medicinal Food』 に掲載された論文など、複数の研究で示されています。熱いコーヒーの場合も体温を上げてしまうため、解決にはつながりません。また、「辛い」食品も避けたほうがいいでしょう。アメリカの研究所John B. Pierce Laboratoryの研究者であるBarry Green氏は、米誌『Scientific American』の記事で、辛い味の食品が「熱」を持っているように感じる理由について次のように説明しています。

辛い食品は、通常は熱に反応する皮膚内部の受容器を興奮させます。これらの受容器は痛覚受容器で、正式には「多モード侵害受容器」として知られています。...(中略)...チリ・ペッパーなどの香辛料に含まれるある化学物質によって痛覚に刺激が加わると、中枢神経系は混乱し、曖昧な神経反応が引き起こされます。中枢神経系は、感覚器官から伝達された情報を伝えられた通りに受け取り、反応を起こします。そのため、痛みや温かさに関わる神経繊維の活動パターンは、暑いという感覚を生じさせると同時に、血管の拡張や発汗、ほおの紅潮などといった、熱による身体的な反応も引き起こします。

けれども、こうした予防策を講じても発汗の原因を絶ちきれない場合もあります。ですので、ストレスや不安などに上手く対処する方法を見つける必要があります。ふつうの人たちよりもはるかに多く汗をかくと感じている人は、医者に相談してみると、解決策を見つける手掛かりが得られるかもしれません。

体臭をコントロールする

過剰な発汗は大抵の場合、体臭の原因になります。そして、これをコントロールするための方法はいくつかあります。最もわかりやすい方法は、質の良いデオドラントを使用するという方法でしょう。デオドラントは良い香りで体臭をごまかすだけでなく、アルコールを含んでいるため、不快な匂いを発生させるバクテリアを殺してくれます。オーデコロンや香水を1~2回吹きかけるのもいいでしょう。

また、体臭には食事が関係する場合もあります。カリフォルニア大学バークレー校が運営するサイト「BerkeleyWellness.com」の記事によると、不快な体臭の原因となりそうな食品や飲み物が何種類かあるそうです。

  • 硫黄成分を含む食品:ブロッコリー、キャベツ、カリフラワーなど、アブラナ属に分類される植物や、タマネギやニンニクのようなネギ属の植物は体臭の原因になります。
  • アルコール:アルコールは、体内に吸収されると、代謝によって酢酸になりますが、一部は汗として排出され、これが不快な匂いの原因になります。

さらにもうひとつ、わかりやすいけれど一部の人たちに軽視されている方法があります。それは毎日入浴するという方法です。体臭の問題を自覚している人は、とにかく毎日入浴し、抗菌石けんで身体を洗うのが手っ取り早いでしょう。1日か2日おきにお風呂に入る生活を続けていると、身体の表面のバクテリアが増殖し、体臭はどんどん悪化していきます。そして、最後になりましたが、腋毛を剃るという方法も効果的です。これは大多数の女性が実践している方法ですが、男性にとっても有益かも知れません。腋毛を剃れば、制汗剤やデオドラントが皮膚に届くのを邪魔していた毛がなくなりますし、腋汗が素早く蒸発してジメッとした感じが減るかもしれません。

汗を隠す服装にする

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筆者自身もそうらしいですが、どのような種類の制汗剤を使っても、あるいはどれほど食べ物に気を付けていても、汗が止まらないという人は少なからずいます。そのような場合、(腋にボトックス注射を打とうと考えている人は別として)対策はわずかしか残されていません。汗の問題に対処する方法のひとつとして、汗を衣服で隠してしまうというやり方があります。

汗で濡れていない普通の人に見える衣服の選択肢は豊富にあります。まず、着る服の色によって汗の見え方は大きく変わります。「Complex」のコラムニストであるJames Harris氏は、同サイトの記事で、汗を異常にかきやすい体質の人が着るべき服の色と、着てはならない服の色について、いくつかのヒントを紹介してくれています。

ネイビーブルーや黒など、暗い色の服は、汗で濡れた部分がそれほど目立ちません。また、白のようにとても薄い色の服も同様です。グレーや青などの明るい色の服は、汗を隠したい人にとっては最悪の選択肢です。このような色を選んでしまうと、自分が暑さに参ってしまっていることが、周囲の人々にはっきりと伝わってしまいます。

さらに、ある種類の模様には、汗で濡れてとても目に付きやすくなっている部分を隠す効果があります。格子柄や迷彩柄などの模様の服を着ると、汗は目立たなくなります。上に着ている服の下にも、何かを身に付けたほうが良いでしょう。「Everyday Health」のコラムニストMike Theobald氏は、自身の記事で、下着の着用や、上からジャケットなどを羽織る方法を提案しています。

服の外までしみる前に汗を吸収してくれる通気性の良い下着を着ましょう。通気性の良い素材のジャケットやカーディガンを上から羽織るのも、汗を隠す方法として効果的です。ただし、重ね着によって暑くなり過ぎて、汗の問題をかえって悪化させるようなことがないよう、上着の生地は、薄手のものや季節に合ったものを選びましょう

着ている服の色と重ね着する枚数のほかに、それらの素材についても意識する必要があるかも知れません。通気性の良い素材は効果的ですが、その中でも「Men's Health」の記事では、「綿は王様」だと紹介しています。

綿は呼吸をします。確かに綿は、激しく汗をかくジムのような場所で着るのにはまったく適していません。なぜなら綿は汗を通さず、逆に吸収してしまうからです。けれども、オフィスのように湿度のほどよい環境で涼しく過ごしたい場合には、綿の服が最適です。ポリエステルや、ポリエステルと綿の混紡素材は、熱を外に逃がさない性質があるため、汗の量をさらに増やしてしまいます。

見た目の印象がいい服を選ぶのはかまいませんが、第一に優先すべき点は着心地の良さです。汗をかいている部分が目立ちそうな服よりは、別の服を着たほうがましでしょう。

汗ジミを防ぐ方法

汗ジミはとてもイヤなものですが、その対策はたくさんあります。可能ならばまず、自分の汗が一切見えないよう、初めから衣服で隠してしまいましょう。ほかにも役に立ちそうなヒントがありますので、以下にご紹介します。

  • 腋の風通しをよくする:汗ジミを防ぐ最も効果的な方法のひとつに、汗が見えてしまう可能性を最初から排除しておく方法があります。ちなみにこれは、筆者のお気に入りの方法でもあるそうです。タンクトップや、腕を通す穴の部分が広めに作られているシャツを着ましょう。すでにデオドラントを付けていて、体臭をコントロールできているのなら、思う存分に汗をかいても誰も気付かないはずです。
  • 着替えを持ち歩く:汗をかき過ぎて不快に感じ始めた時は、服を着替えましょう。着ているのと同じ服を用意しておけば、着替えた後も、何事もなかったかのように振る舞えます。汗の問題がすべて腋汗に関係しているわけではありませんが、少なくともこの方法は、腋汗に悩んでいる人にとっては最良の対策のひとつと言えるでしょう。
  • 汗取りパッドを着用する:市販の汗取りパッドは、直接身に着ける物や衣服に取り付ける物があり、衣服の外側まで汗がしみる前に、汗を吸収する機能があります。また非常時には、テープとペーパータオルで簡単な汗取りパッドが作れます。この方法は、腋の汗を乾かすために、10分おきにトイレに行く方法よりも優れていると言えます。

恥ずかしい汗ジミを避ける方法はたくさんあります。最も重要なのは、一日の予定を立てておくことです。自分の体質、服装、一日の間に自分が参加する予定の活動について考えてみましょう。汗をかきやすいと自覚している人は、暗い色の服や模様の入った服を着るのです。もし、ドレスシャツを着てダンスをするとわかっているのなら、下着や汗取りパッドを身に着けるなどの対策を検討してみてください。

汗ジミを消す方法

過剰な汗について最も厄介なのは、衣服やベッドにシミが残ってしまう場合があるという点でしょう。シミができるのを防ぐことは無理だとしても、少なくとも取り除くことは可能です。「The Art of Manliness」のコラムニストBrett氏は、腋汗のせいでできた黄色いシミを消すためにいくつかの方法を試してみたそうです。Brett氏が試した製品の中には、漂白剤やアンモニア、「オキシクリーン」に類似したシミ抜き、「Raise Yellow Stain Remover」などといった製品が含まれていましたが、最終的には、「オキシクリーン」と同じタイプの製品の使用を推奨しています。

手順としては、洗面台にお湯を入れ、「オキシクリーン」を1杯注いでかき混ぜるだけです。必ず黄色いシミの部分がしっかりお湯に浸るように、シミの付いたシャツを洗面台に漬けましょう。軽いシミの場合は、シャツを1時間漬けておくだけで大丈夫です。また、少し頑固なシミなら一晩漬けておきましょう。洗浄液に充分な時間漬けた後は、シャツをすすぎ、通常どおり洗濯します。

シャツだけでなく、ほかのさまざまな衣類やベッドシートのシミもこの方法で落とせるので、夜寝ている間に汗をかきやすいという人にはオススメのテクニックです。家にあるものだけを使って解決したいのなら、食器洗い用の洗剤と過酸化水素を混ぜ合わせて、「オキシクリーン」に似たシミ抜き剤を自分で作ってしまいましょう。食器洗い用の液体洗剤と過酸化水素を1:2の割合で混ぜ合わせてシミ抜き剤を作ります。衣類に付いたシミを落とす時は、この液体に最低1時間は浸けておきます。頑固なシミの場合は、この液体に重曹を加えたものを付けて擦ってください。Tシャツやベッドのシーツの黄色いシミは、汗ジミと同じくらいに恥ずかしい光景ですので、ためらわずに消してしまいましょう。

汗は防げる場合もありますが、どんなに注意をしていても汗は出るものです。ですから、あまり神経質になり過ぎることはありません。汗で服を濡らしてしまった時の対処法はたくさんありますし、不快な体臭と戦うための武器もいくつかあります。汗のかき過ぎは恥ずかしいものですが、汗は本当にコントロールできるのです。

Patrick Allan(原文/訳:丸山佳伸、吉武稔夫/ガリレオ)

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