「富士通グループの技術と学生がもつアイデアを掛け合わせ、新たな価値を生み出す」ことを目的に、約4か月間にわたって進められたプロジェクト「あしたラボUNIVERSITY」。ライフハッカーもトークイベントでコラボレーションしましたが、その他の目玉として行われたのがアイデアソン「あしたのまちHack」。関東地区(2月19~20日)、関西地区(2月26~27日)に分かれ、「私のまちの魅力を100倍にする!」をテーマに、両会場で合計22のアイデアが披露されました。

アイデアはいずれも、ICT(情報通信技術)を利用して、自分にゆかりのある「まち」の課題を解決し、もっと住みやすく、もっと魅力ある場所に変える製品・サービスとは何かについて、考えられたものばかり。一昨日のアイデアソン総括編昨日の関東大会レポートに続き、関西大会のアイデアソンの様子をお届けします。以下「あしたのコミュニティーラボ」のこちらの記事より、再編集して転載します。

「あしたのまちHack」関西大会は2015年2月26~27日に、ベイエリアにある「ソフト産業プラザ イメディオ」(大阪府大阪市)で開催。参加者は学生42名、社員11名。関西エリアはもちろん九州や東日本から参加した人もいました。関東大会編に引き続き、アイデアソンの経験が将来、そして明日からの働き方にどんな新たな気づきをもたらせるのか、参加したみなさんの意見を伺いました。

「"本気"で継続していれば怒られない」と赤いTシャツにジーンズの公務員は言った

1日目のキーノートに登壇した社外ゲストは、自称「日本一公務員っぽくない公務員」こと大阪市経済戦略局立地推進部の角勝さん、そして、神戸デジタル・ラボの社員でありながら「神戸ITフェスティバル」「TEDxKobe」を手がける舟橋健雄さんです。

世の中にイノベーションを起こすテクノロジーを事業化したいと活動する起業家の支援拠点として大阪市が開設した「大阪イノベーションハブ」の推進役ながら、赤いTシャツにジーンズというラフな出で立ちで登場した角さんは「こんな格好しているけど公務員です。怒られやしないかと思っていません? そう、あなたたちは正しい! 怒られます(笑)。でも、ずっとそれをやり続ける、そして本気でやる。継続と本気度で、だいたい周りは諦められて、怒られなくなるものなんです」と話します。

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(左から)キーノートゲストの大阪市 角勝さん、神戸デジタル・ラボ 舟橋健雄さん、富士通株式会社 川村晶子さん

舟橋さんは「阪神大震災以降、神戸にはさまざまな素敵な活動やコミュニティーが生まれているが、残念ながらみんなバラバラ。そこで僕は、ITやアイデアという手段で、コミュニティー同士をつなぎ、イノベーティブな"メタコミュニティ"形成を目指している」と自身の活動を紹介しました。最後に、スティーブ・ジョブズの言葉を引用し、「バラバラの点も振り返ればつながってくる。未来にはそれがつながると信じている」と伝えました。

富士通株式会社からは、地域新ビジネス推進統括部の川村晶子さんが登壇。高知出身、高知在住ながら、東京本社に籍を置く川村さんは、都市と地域をつなぐ地域活性化の経験を話したうえで「"私おこし"がすべて。まず私が何をしたいか。その後、会社、地域、お客様を共有し、ディスカッションで生み出していく。私の"私おこし"、みなさんの"私おこし"が将来的につながっていけたらいいですね」と話しました。

社外ゲストとしてはほかに、2日目にCode for IKOMA代表の佐藤拓也さんが審査員として参加しました。

地域の魅力を発掘!豆知識でモンスターを育成する観光アプリ

関西大会では10チームが結成されました。

優秀賞を受賞したのは「STST ~Special Team~」です。西日本出身の男女2名ずつで編成されたチームで、富士通でネットワーク関連の業務を担当する戸田徳大さんのほか、総合政策専攻の坂口智佳さん、生物学専攻の鈴木美穂さん、経済学専攻の冨田真之佑さんと、専門のまったく異なるメンバーが集まりました。チームが考えたのは、まちのなかで地元の人の声をベースにした豆知識を拾いながら、モンスターを育てるというゲームアプリ。

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チーム「STST」
(左からメンバー:坂口智佳さん、冨田真之佑さん、戸田徳大さん、鈴木美穂さん)

チーム「STST ~Special Team~」のアイデア

Monche(Monster知恵袋)~地域の人の声を観光客に届ける~:人気スポットへの観光客集中を避けるニッチ情報提供アプリ。地域の隠れた魅力を発掘し、定番スポット以外へも人を呼ぶ。探索しながらその場所でスマホを向けるとモンスターが出現し、地元の声をベースにした豆知識を披露。反応に応じてモンスターが成長し、情報は地域にもフィードバックされる。

「観光アプリが多いなか、"歩く楽しみ"が考えられていて、子どもも楽しめそう。地元の情報は地域のコミュニティーに入って聞きにいくと言っていて、そこまでやるなら現実味もあると思った」と舟橋さん。

大阪在住の冨田さんは「あらゆる機能が東京に行ってしまい、関西の経済が衰退していることが悔しかった。こんな観光アプリで西日本を活気づけたい。待ってろ東京!」と成果発表会に向けて意気込みを語りました。

災害時には安否を、平常時には観光を助ける「マンホール」

最優秀賞は「まん!ほーーーる!」。富士通デザインの平田昌大さんのアイデアのもと、女性5名と男性1名が集まりました。当初は「地元を出る前に地元を知る!地元卒業旅行」のアイデアでスタート。しかしチーミング後にメンバーから、平田さんが出したもう1つのアイデア「災害時のマンホール活用」のほうがいいとの意見が集まり、思い切って方向性を変えたのが功を奏しました。

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チーム「まん!ほーーーる!」
(左からメンバー:平田昌大さん、永原敬士さん、手塚美和さん、増本温菜さん、左鴻美希さん、松下いよさん ※渡辺千尋さんは2日目欠席)

チーム「まん!ほーーーる!」のアイデア

LIVEPASS:スマホなどが使えなくなる震災時、マンホール型コンパス「LIVEPASS」の上に立つと、あらかじめ購入しておく"お守り"の中のRFIDから、個人情報を識別。避難するのに最適な場所までの方向を、マンホールが光で知らせてくれる。

「気象データを使った防災ハッカソンもやっていますが、非常時のことをよく考えている。観光としての広がりにも期待したい」と佐藤さん。

平田さんは「学生のみなさんから『こうしたほうがいいでしょ!』とどんどんアイデアが出てきた。普段の仕事ではアイデアを出すにもバイアスがかかりがちだけど、自由に意見を出すことを忘れてはいけないと初心に戻れました」と語ります。

20代の社会人でも「何のために働くんだろう?」と常に考えよう

富士通株式会社 流通ビジネス本部から参加した大橋一代さんは社会人3年目で、普段は営業の仕事に従事。以前から地域活性化やソーシャルビジネスへの関心を持ち、プライベートな時間を使って、関連するワークショップやイベントにも参加しています。

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富士通株式会社 大橋一代さん

普段の仕事とソーシャルビジネスをどこかで結び付けられないか。そんな思いで、今回はじめてのアイデアソンに参加しました。大橋さんはその成果として「キーノートで登壇された川村晶子さんのように、個人でも"私おこし"ができると自信になった」という点を挙げ、さらにこう続けました。

「お金や時間にどうしても制限がかかる日常的な仕事と違って、今回のアイデアソンは、学生と自由な環境でアイデアを出すことでさまざまな気づきを得られた。20代の社会人になっても『何のために働くんだろう?』と考えることがあるけど、今回は新しい働き方について考えるきっかけにもなりました」

自分にできることは、もっと大きく、世界にもつながる!

四方菜々美さんは、これまでICTにまったく興味がなかったという文学部人文学科の学生。「就職活動のなかで『インターンいかな!』と就職サイトでいろいろ探していた」という四方さんは、興味本位で今回のアイデアソンに参加しました。はじめてのアイデアソンといいながらも「その場でひらめいた」というアイデアスケッチは1日目の上位アイデアに選ばれ、そのまま「チームSmile」を結成。そして2日目「じぃじとばぁばのひみつきち」として発表に臨みました。

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四方菜々美さん。明るいキャラクターでチームをけん引していた

「チームSmile」のアイデア

じぃじとばぁばのひみつきち~わくわくどきどきの生まれる場所~:待機児童問題を解決する、高齢者を雇用した児童預かり所。おじいちゃん、おばあちゃんが「隊長」となって、隊員である子どもとミッション型カリキュラムをこなし、自然の中でのびのびと学ぶ。全方位カメラを通じて遠隔地でも園内の様子が見られるなど、ICTも活用。

審査発表後に進行役からマイクを向けられ、「私が出したアイデアだったからがんばったけど...めっちゃ優勝したかった!」と素直に悔しさを表現していた四方さん。アイデアソン後「共創は感じられましたか?」の問いには、次のように答えました。

「私は人の笑顔が見られたら、そこにすごいやりがいを感じるし、もっとがんばれる。それを仕事で実現するにはどうすればいいのか、最近すごく考えるんです。今回は、自分やまわりの人の課題、そしてまちのさまざまな問題を解決していくことを、みんなで知恵を振り絞った。するとこれまで考えていたより、自分にできることは、もっと大きいことがわかり、それは"世界"の未来につながると知りました

楽しいアイデア共鳴で地域課題まで解決できるなんて!

優秀賞受賞の「STST ~Special Team~」の鈴木さんも、四方さんと同じく、情報系の知識はないという生物学専攻の大学院生です。鈴木さんの大学で企業研究会があり、そこで富士通のロゴマークに表れている通り、ICTでできることは「∞」(※富士通のロゴマークはJの字に∞が入っている)と知らされ、「世の中の地域の問題を解決したいという富士通の思いに共感した」といいます。

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ボードを使いながら意見をまとめていく

「普段は研究室にこもりっぱなしで、意見交換ができるのは学会に行ったときくらい」と鈴木さん。2日間で文系理系、さまざまな専攻が集まって考えるアイデアソンに「狭まっていた個人のアイデアが共鳴することがおもしろく、かつ、地域課題まで解決できるなんてすばらしい!」と感じたそうです。

数年後、学生のみなさんは社会に出ていきます。関東大会のキーノートに登壇したGUGEN代表の崔さん、そして、関西大会の角さんの言うとおり、アイデアの"具現化"までのプロセスには継続性が必要です。今回参加した学生のみなさん、そして、若手&中堅社員のみなさんが、それぞれ別々の場でこの2日間で感じた成果を継続していけば、今は想像できない明るい未来がつくりだせるかもしれません。

明日は、いよいよ関東・関西大会の優秀賞から、グランプリを決める「決勝プレゼン」の様子をレポートします。

あしたラボUNIVERSITY|あしたのコミュニティーラボ

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(ライフハッカー[日本版]編集部)