「富士通グループの技術と学生がもつアイデアを掛け合わせ、新たな価値を生み出す」ことを目的に、約4か月間にわたって進められたプロジェクト「あしたラボUNIVERSITY」。ライフハッカーもトークイベントでコラボレーションしましたが、その他の目玉として行われたのがアイデアソン「あしたのまちHack」。関東地区(2月19~20日)、関西地区(2月26~27日)に分かれ、「私のまちの魅力を100倍にする!」をテーマに、両会場で合計22のアイデアが披露されました。

アイデアはいずれも、ICT(情報通信技術)を利用して、自分にゆかりのある「まち」の課題を解決し、もっと住みやすく、もっと魅力ある場所に変える製品・サービスとは何かについて、考えられたものばかり。昨日のアイデアソン総括編に続き、本日は白熱した関東大会のアイデアソンの様子をお届けします。以下「あしたのコミュニティーラボ」のこちらの記事より、再編集して転載します。

2015年2月19~20日に「コワーキング・スペースMONO」(東京都江東区)で開催された「あしたのまちHack」関東大会。学生42名、社員15名が集まりました。ほとんどがアイデアソン未経験者のなか、共創によるアイデア発想の経験が将来、そして明日からの働き方にどんなポジティブフィードバックをもたらしたのか。関東大会はテレビ撮影も入り、大いに盛り上がりました。

アイデアの"具現化"には継続性が必要

1日目のキーノートには、社外ゲストとして一般社団法人コード・フォー・ジャパン代表理事の関治之さんと、株式会社ピーバンドットコムマーケティング統括マネジャーでGUGEN代表の崔熙元さんが登壇。

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(左から)キーノートゲストの一般社団法人コード・フォー・ジャパン 関治之さん、GUGEN代表 崔熙元さん、富士通株式会社 吉村啓一郎シニアマネージャー

関治之:アイデアやITツールを活用し、地域の人たちが行政と同じ目線で語り合える場をつくるのが私たちの使命。今日みなさんが考えたアイデアを実際につくってみたくなったら...ぜひ、それを私たちに発信してほしいです。もしかしたらアウトプットを一緒につくりだすことができるかもしれない。

崔熙元:日頃の環境とは違い、多様な人が集まるのがアイデアソン。視点が変わることでアイデアも生まれやすくなる。では、さらにその先でアイデアを具現化するにはどうするか? アイデアは実際につくってみて市場に出してみないとわからない。だから結果がどうであれ、継続することが重要なんです。

富士通からは地域新ビジネス推進統括部の吉村啓一郎シニアマネージャーが登場。「企業の役割は、個人や法人の課題解決から、世の中全体の課題解決に変わってきている。そのために地域新ビジネス推進統括部があります。今日は『まちの課題』をテーマに、自分が普段の活動拠点あるいは地元をどのように思っていたのか、あらためて考えてみてください」と話しました。また、地域新ビジネス推進統括部からは、渡辺豪千統括部長が2日目に審査員として参加しました。

「ベンチャー企業では難しいが、富士通には挑戦する価値がある」と言わせたアイデア

関東大会では12チームが結成され、2日間のワークがおこなわれました。

優秀賞を受賞したのは「FUJIパーク」。1日目のチーミングでは「昼と夜の2つの顔をもつ公園」というアイデアのもと、すぐにメンバーが集まりましたが、気がついたらメンバーは女性ばかり。その場で男性メンバーが募集され、藤原崇宏さんが参加しました。

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チーム「FUJIパーク」
(左からメンバー:平岡真珠美さん、野崎悠さん、上野絵未里さん、奥田慶香さん、藤原崇宏さん)

チーム「FUJIパーク」のアイデア

FUJIパーク~昼と夜の2つの顔をもつ公園~:利用者がいない公園の活性化を通じて地域を活性化する。昼カフェ&夜バーなど、昼夜で二面性を持たせた公園を運営。顔認証システムを導入し、公園のセキュリティを向上させたり、子どもが出入りすると親のスマホに通知がいく機能を持たせたりする。休日には世代を超えたイベントも開催される。

「さまざまな理由から活用が諦められている『公園』をビジネスに展開することは社会的な意義も大きい。ベンチャー企業では難しいテーマの問題だけど富士通には挑戦する価値がある」と崔さん。

藤原さんは「最初は勇気が必要だった」と笑いますが、女性メンバーからは「彼が率先してプレゼン資料とかをつくってくれて流れができた。計画力はさすが!」と厚い信頼が寄せられていました。メンバーは「目標として、楽しむ気持ちを忘れずにできたことが結果につながった」と口を揃えます。

バス停を投票で決めて、ドローンが持ってくる!

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チーム「ばすっち」
(左からメンバー:元良龍太郎さん、高尾尚暉さん、赤石直貴さん)

そして、最優秀賞を受賞したのは「ばすっち」

チーム「ばすっち」のアイデア

ばすのす~Bus stop Not stop~:運行するバスが少なく、特に雨や雪に困っている、そんな地方居住者に向けた交通システム。イベント情報やお天気情報を織り込みながら、目的地までの最適なルート・時間を決め、乗車場所までドローン(無人飛行体)がバス停を運んでくれる。

「プレゼンも工夫していたし、ドローンがバス停を持ってくるなんてはじめて! 公共交通は課題がまだまだあるし、より良くしていける余地がある。アイデアが出しやすいから、ビジネス的にも可能性があるんです」と関さんも驚きの声。

とはいえ、「バス停を投票で決める」「ドローンがバス停を持ってくる」というアイデアはインパクト抜群でしたが、4人目のメンバーが他のチームに技術担当として引き抜かれるなど、開始早々、苦労が絶えなかったようです。学生メンバーの赤石直貴さんと高尾尚暉さんが積極的に事務局スタッフに話を聞いてまわり、とうとうドローンの試作まで手伝ってもらいました。「より良いものをつくるためにこの場にあるものは何でも役に立てようと思いました。ここまできたら大人を巻き込むしかない! 実際の仕事でもそんな力が必要なのかも」と、仕事に必要な交渉術(!)も学べたとコメントをもらいました。

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ばすっちは事務局スタッフを3名巻き込みプロトタイプを制作した

人の価値観が多様になったとき、企業が果たすべきこと

ほかの参加者はこの2日間でどのような効果を感じたのでしょうか。富士通株式会社 テレマティクスサービス統括部の陶(すえ)拓也さんは、社会人3年目。アイデアソンへの参加ははじめてでした。現在は、同社が提供する位置情報サービス「SPATIOWL(スペーシオウル)」の開発チームに所属。IoTが活発になる近い将来を想定し、車に限らず、人やモノなどあらゆる移動体の位置情報を活用するプラットフォームの企画開発に従事しています。

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富士通株式会社 陶拓也さん

2日間にわたり、位置情報を用いたレンタサイクルのアイデアを考えた陶さんは、「レンタサイクルの取り組みはすでに世の中にありますが、あらためてそれを考えたことでいろいろな課題が見えてきました。富士通がハブとなってICTで貢献できる部分もかなりある」と、仕事に持ち帰れる成果を振り返りました。

では、学生との共創の手応えはどうだったのでしょうか?

陶拓也:これまで通りの働き方で本当に新しいものが生まれるのか、最近そんな疑問を感じています。ある程度の物欲が得られる現代において、人の価値は多様化している。ならば富士通はそのなかでどうやって貢献すべきなのか。それは実際のユーザーに聞かないと見えてきません。普段は社内でヨコのつながりをつくる部門横断的な活動をしていますが、これからは学生を含んだ社外の人ともつながりをもちたい。社内だけに閉じているのもよくないと、今回でよくわかりました。

このサービスはキャリーバックの概念を変える?

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チーム「リカちゃん」
(左からメンバー:奥田澄さん、俵口大輝さん、四本(よつもと)桃衣さん、東風谷(こちや)和泉さん)

チーム「リカちゃん」は4人編成で、男女2名ずつで構成されました。旅行のときの荷物が軽くなれば、お土産をもっとたくさん買えるのに...。1日目のスピードストーミングで意気投合した四本桃衣さんと東風谷和泉さんの、女性ならではの悩みがそのままアイデアとなりました。

そこに現れたのが俵口大輝さんと富士通ソフトウェアテクノロジーズの奥田澄さんです。俵口さんは「ほかのアイデアはデバイスそのものを考えることがメインにされていたけど、彼女たちのアイデアはICTとか関係なくしても魅力的だった。ステークホルダーもはっきりしていて、あとはお金の流れが整理できたら...」と、チームに参加した理由を説明します。

チーム結成後も、四本さんと東風谷さんは「アイデアの宝庫」でした。2人はユーザー目線から次々にアイデアを出し、俵口さんはSEである奥田さんとともに、ビジネスとしての実現性を追求。アイデアの具現化をサポート。「あしたラボUNIVERSITY」に関わるメンバーが参加するFacebookグループも活用し、女性参加者にアンケートをとっていたのも印象的でした。

「ヒット商品を世に送り出すプロセス」がそこにはあった

チーム「リカちゃん」のアイデア

地域連携! Feel Free(フィルフリ)~キャリーバックの概念を変える~:女性をターゲットにした、服のレンタルサービス。あらかじめ地域のアパレル店の服をサービス上で選んでおけば、宿泊するホテルに届けられる。荷物レスで移動範囲が広がり、荷物に空きがある分、地元での買い物が促進される。

「地域連携! Feel Free」は惜しくも受賞を逃しましたが「旅行前にシステムを通して自分がレンタルで着たい服を選んでおけば、地元のアパレル店の服が滞在先のホテルに届き、手ぶら旅行が楽しめる」というサービスは、シンプルながらも魅力的なものでした。

終了後には参加者からフィードバックが寄せられ、「『今からすぐ旅行に行く!』というときでも使えたら便利」といった声に、メンバーは「どういう心境のときにこのシステムがあったらうまく機能するのか、それをきちんと伝えられればもっと共感が得られたかもしれない」と改善点を挙げます。

チーム「リカちゃん」がこの2日間で取り組んだのは、アイデア発想→チームづくり→役割分担→ビジネスモデル構築→商品PR、そして商品改善です。これはまさしくヒット商品を世に送り出すプロセスそのもの。この経験は、きっと将来の仕事に活きてくるのではないでしょうか。最後に東風谷さんは、将来の働き方のイメージを、こんなふうに話してくれました。

「大学の専攻が同じメンバーだと同じようなアプローチしかできないけど、今回はいつもなら絶対に生まれないアイデアを出せました。社会人になっても枠にとらわれすぎない手法でアイデアを出していけたらいいですね」

最初は控えめだった学生たちも、アイデアワークから一気にヒートアップ。最後は笑いの絶えないプレゼンテーションになりました。では、"笑いの本場"である関西大会は、これを凌ぐ盛り上がりを見せたのでしょうか...その様子はまた明日、お届けします。

あしたラボUNIVERSITY|あしたのコミュニティーラボ

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(ライフハッカー[日本版]編集部)