ちょっと前まで名刺管理といえば、手作業でせっせと五十音順に分け、そのつど専用ケースに収納するのが当たり前でしたが、最近ではスマホでパシャッと撮影して、そのままクラウド上でデータを管理する手法がだいぶ定着してきました。必要な連絡先が見つからなくてガサゴソ...というのは、やはりビジネスパーソンとしてはお粗末。自分にとって最適なツールを見極めて、積極的に活用したいものです。

しかし、人間とは生来ものぐさな生き物なのか、「あとでまとめてスキャンしよう」と先延ばしにした結果、ぱんぱんに膨らんだ名刺入れを持ち歩いている人も決して少なくありません。これはちょっとカッコ悪い。

そんな中、名刺管理はさらに一段階の進化を遂げるときがきたようです。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)で新しい働き方を実現するプロダクトやサービスを提案するプラットフォーム、「カクシン」で公開中の『ケースキャン』。なんと、スキャニングの手間すらもカットした、近未来的な名刺管理ガジェットが開発中なのです。

名刺をしまうだけでそのままデータベースに直行

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ボックスタイプの端末は、スキャナーではなくあくまで「名刺入れ」なのがポイント。つまり、誰かと名刺を交換したら、いつものようにそのまま名刺を収納、その瞬間からスキャン→データベース更新というフローが始まります。これなら、名刺の整理を後回しにしてしまうこともなく、どんな怠け者でも完璧な名刺管理が行なえるというわけです。

「名刺というのは油断していると、すぐに20枚、30枚と溜まってしまいます。そうなると、スキャンしたり写真を撮ってデータ化するのも、手間がかかりますよね。その点、いつもと同じように名刺交換をして、しまうだけでいいのが『ケースキャン』の大きな強みです。名刺入れに名刺を入れない人はいないわけですから、そのアクションだけですべてを完結してしまうのが理想だろうと考えたのが発端でした」

そう語るのは、株式会社リクルートキャリアの宮崎雄一朗さん。ユーザー目線に立った、シンプルな行動原理に則った着想と言えます。収納した名刺はそのままケース内に収納でき、さらにデータ化された日時と照合すれば、それがいつ名刺交換をした人物なのかも確認可能。

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▲株式会社リクルートキャリア 宮崎雄一朗さん

また、現状のモデルはまだ試作段階ながら、本体にディスプレイを搭載することで外出先からデータベース検索したり、あるいはデータ化されたメールアドレスへ簡単な操作でお礼メールを発信するなど、さまざまな機能の広がりが想定されています。

「細かな仕様については、『カクシン』での接点を通じてご意見を聞きながら、検討を進めて行きます。具体的には、登録をしていただいた方の中から、製品の体験会や、座談会にお越しいただいて声を聞かせていただくというようなことも検討していきます。さらなる小型軽量化を目指すのか、あるいはまだ考えてもいなかった新しい機能を作っていくのか。我々としては、ユーザーの皆さんが本当に欲している物なのか、皆さんの困り事をちゃんと解決できるツールになっているのかを、『カクシン』を通じて検証したいと考えています」(宮崎さん)

「作業」を0に、「仕事」を100に。

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▲株式会社リクルートキャリア 古賀敏幹さん

それにしても、開発段階からこうして商品企画がオープンにされているのはなぜなのか。

「早い段階からユーザーの声をヒアリングすることで、ニーズの有無を探ったり、新たな知見を得る狙いがあります。『ケースキャン』の企画が持ち上がったのは、昨年9月のこと。開発を進めるには当然コストがかかりますから、一体どのくらいの人々が実際にこれを"ほしい"と思ってくれるのか、事前に聞いてみてはどうかと考え、今年2月に『カクシン』をローンチしました。『ケースキャン』の他にもいくつかのプロジェクトを公開していますが、いずれも根底にあるのは、"面倒な作業"を0にし、"楽しく働く"を100にしようという理念です」(同・古賀敏幹さん)

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▲開発中の『ケースキャン』のモックアップ。今後さらに改良を重ねて見た目も進化するとのこと

「カクシン」では現在ケースキャンの他にも、営業チームを活性化する「ワークログの利用で業績UP!」、パーソナルロボットのPepper(ペッパー)を活用した「職場を明るくするSmile Robot」、ホワイトボードの会議メモをスマート管理する「Boarding」など、4つのプロダクトやサービスが提案されています(「Boarding」は現在すでにiPhone・iPadアプリとしてApp Storeにて公開中)。

いずれもユーザーは、"いいね!"ならぬ"ほしい!"ボタンをクリックすることで、実現希望の意思を表明。それが積み重なることで、各企画の「ほしい!メーター」のレベルが上がっていく仕組みとなっています。

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先にプランを提示し、支援者を募るというモデルはクラウドファンディングに似ていますが、求めているのは資金ではなく"ほしい!"という声。これを集めることで市場のニーズをくみ取り、製品化の可能性を検討する、新しいマーケティングへの取り組みでもあります。

まさに発展途上。ユーザーからのリアルなご意見求む!

リクルートキャリアといえば、『リクナビ』や『リクナビNEXT』、『リクルートエージェント』の運営母体でもあり、これまで正社員の就職支援、転職支援を手がけてきた会社。これまでこうした"働く機会の提供"にコミットしてきた同社が、"働く"というより大きな枠組みでビジネスパーソンに新たな価値を提供できないかと模索する中、ひとつのアイディアとして「"働き方"を革新する」というものがあったそうです。それを具体化したのが『カクシン』というわけです。

「私たち自身、『ケースキャン』のようなハードウェアを提供するビジネスは未経験ですから、IoTによってリクルートキャリアのビジネスにおいてもイノベーションを起こそうという覚悟を持った、新たな挑戦でもあります。『カクシン』というプラットフォームを利用することで、"これは今までになかった"と思われる斬新なサービスを、スピード感をもって実現していきたいですね」(宮崎さん)

なお、「カクシン」ではコラボ企業や商品企画などを幅広く募集中。プロダクトの先行導入企業も募っています。さらに今後は、ユーザーとも積極的にコミュニケーションをはかるべく、Facebookなどの活用を高めていきたいとのこと。

企画段階からユーザーの視点を取り入れられるのは、何よりの強み。今回の『ケースキャン』にしても、最終的な価格との折り合いを考慮しながら、ユーザーにとってベストな最終形を模索していきます。

理想のプロダクトを構想のままで終わらせないために、プロジェクトを後押しするのはユーザーの皆さんからの"ほしい!"という声。購買意欲を表明することで開発を支援するという新しい物づくりに、皆さんもぜひ参加してみてください。

ケースキャンカクシン

(文/友清哲)