米Lifehackerの使命のひとつに、皆さんにお金を貯めるコツをお伝えするというものがあります。

けれども、お金が充分貯まったら、何に使えば良いのでしょうか? そのお金を最大限に有効活用したり、幸福感をめいっぱい得たりするには、どうすればいいのでしょうか?

この問いに対する答えを見つけるにはまず、1日のうち、何にどれくらいの時間をかけているかに注目し、それから、その割合に応じてお金を分配してみましょう。

私はこれを「コンフォート原則」と呼んでいます。

コンフォート原則とは

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私自身を例に取って、「コンフォート原則」について、具体的に説明していきましょう。

私は在宅勤務なので、1日平均10時間、パソコンの前で椅子に座っています。

1日24時間から睡眠時間の8時間を引くと、残りは16時間。そのうちの10時間、すなわち、1日の活動時間の62%をこの椅子に座って過ごしている計算になります。かなり大きい割合ですね。

では、「コンフォート原則」を当てはめてみましょう。活動時間の62%を、並の椅子で「何とか間に合わせ」、どちらかと言えば苦痛な状態を気力で乗り切るのと、同じ時間を快適に過ごすのはどちらが望ましいでしょうか? この問いに答えを出すのは、1日のなかであるタスクに取り組む時間の割合が大きければ大きいほど簡単になります。

当然ですが、1日の62%を腰の痛みに苦しみながら過ごすよりも、快適に過ごすほうを望みますよね。

このような枠組みで考えると、お金の使い道も容易に決断できるようになるのです。とは言っても、割合を使った説明はわかりにくいですよね。

抽象的な数字よりも、論理的な数字のほうが楽に考えられるものです。ですので、具体的な数字を使って考えてみましょう。

仕事用の椅子に座っている時間を1年あたりで計算すると、「10時間/日 x 5日/週 x 52週/年 = 2600時間」となります。

(長期休暇が数週間あると思いますが、残業や休日出勤も考慮し、その分は単純に帳消しにして考えましょう)

たとえば、オフィス家具ディスカウントチェーンの「オフィス・デポ」で販売されているような、約1万円程度のごく標準的な事務用椅子と、自分の体型にフィットして、背中をしっかりとサポートしながらリラックスして座れる約8万円の上質の椅子があるとします。

両者の約7万円を2600時間に分散すると、1時間あたり約27円になります。毎時間25セントを出せば快適さが手に入ると言われたら、どうしますか? おそらく払うと言うでしょう。

毎年椅子を買い換えるわけではないでしょうから、この数字はもっと小さくなります。5年で買い換えるとしても、1時間あたりの差額は5セント。ちなみに、高級椅子はもっと長持ちするはずです。

次に、1日に行なうその他の行動について検討し、いくらかけるか調整していきましょう。

たとえば、パソコン(先ほどの椅子とほぼ同じ使用時間になります)、スマートフォン(1時間~2時間)、マットレス(8時間以上)などです。

仮に、パソコンはアプリの起動に10秒かかるものの、ハードディスクをSSDに交換すれば、起動時間を2秒まで短縮できるとしましょう。待ち時間のストレスと節約できる時間を考えれば、購入する価値はあると言えます。

メモリ容量の不足や、単純に処理速度が遅いといった原因で頻繁にパソコンが動かなくなる場合、メモリを増設したりパソコンを買い換えたりすることは有益です。

苦痛やストレス、不快感を最小限に抑えて1日を過ごせるのなら、現在よりもずっとリラックスした生活が送れますし、本人だけでなく、周囲の人々にも良い影響を与えます。

また、ストレスを和らげるために後でやむなくお金を使うよりも、最初からストレス予防をするほうがはるかに賢いやりかたです

コンフォート原則を自分に当てはめる手順

在宅勤務でない場合、使用時間が1日の大半を占めるものを特定するのはそれほど簡単ではないでしょうが、できないことはありません。

まず、1日に取り組むタスクの一覧を作りましょう。それから、それぞれのタスクに必要な道具を検討しましょう。一般的なリストを下に挙げてみました。

  • 8時間:(勤務時間)オフィス用チェア、パソコン、仕事用デスク、PCモニター
  • 2時間:(通勤)車、自動車内の備品
  • 1時間:(調理)台所用品
  • 3時間:(リビングルームでの娯楽)テレビ、ビデオゲーム、音楽
  • 1時間:(読書)KindleおよびiPad
  • 1時間:(エクササイズ)ランニング、トレッドミル、エリプティカルトレーナー(ペダルを踏むと足が楕円形を描くようになっているエクササイズマシーン)

上司に高価な椅子の必要性を説明してもなかなか理解は得られないでしょうが、運が良ければ、エルゴノミックデザインのキーボードやマウス、または高性能のモニターなどを気前よく導入してくれるかもしれません。

たとえそれが無理でも、「コンフォート原則」に照らして考えれば、自腹を切ってでもそれらを導入したほうが、より快適な生活が得られます。心も体も元気になれるならなおさらです。

余暇時間もコンフォート原則に基づいて投資する

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「コンフォート原則」は、余暇の時間にも適用できます。

仕事の後、自宅の裏庭で1時間ほどガーデニングを楽しみながら1日の緊張を解きほぐしたいという人は、上質なガーデニングツールを使いましょう。

エクササイズを日課にしている人は、高性能のランニングシューズやランニングウェアを購入しましょう。

また、週末のサイクリングが趣味の人や自転車通勤をする人は、もっと高級な自転車に乗りましょう。そうすれば、きっと楽しく過ごせるはず。

皆さん自身、もしくは、皆さんの家族が日常的に料理を楽しむのであれば、上等な調理器具を持つことで、どれだけストレスを感じず楽に作業できるか、想像してみてください。

オンボロの車で長時間通勤しているものの、だからといって新車を購入するほどではないと思う人もいるかもしれません。けれども、せめてシートの背もたれを改良したり、高性能のカーステレオやカーナビを導入したり、あれこれ工夫すれば、惨めな通勤時間も多少は楽しくなります。

また、通勤時は電車やバスの中など、ひとつの場所に1日2時間閉じ込められるというなら、ちょっとお金を出してオーディオブックを買い、耳を傾けてみませんか。楽しいだけでなく、勉強にもなりますよ。

腰痛気味だという人や、現在使用しているマットレスや敷布団に不満がある人は、すぐにでも良いものに買い換えるべきです。

毎日欠かさず、1日の3分の1の時間をその上で過ごすわけですし、眠りの質は残りの3分の2の時間にも多大な影響を及ぼします。寝具にお金をかける価値は大いにあると言えるでしょう。

贅沢を我慢すべきところは?

自由になるお金を快適な生活のために使う人は多いでしょうが、必ずしも最適な使い方をしているとは限りません。

たとえば、年に週末4回しか使用しないジェットスキー。こうしたものにお金を注ぎ込むくらいなら、たとえ贅沢品ではなくても、毎日欠かさず使うものを買ったほうが、長期的にはより幸せになれるでしょう

高揚感を得るために「買い物療法」に走って、滅多に使わないものを買うのは簡単ですが、そうして購入したものが、日々の生活向上にどれくらい役立つかを考えてみましょう(どうしてもジェットスキーに惹かれるなら、買わずにレンタルするという手もあります)。

また、「充分良い」という概念を心に留めておく必要があります。なぜなら、ものごとはいずれ、「収穫逓減」に行き当たるからです。

約5万円のパソコンと約11万円のパソコンには大きな違いがあるかもしれませんが、価格帯が上がって、約16万円のパソコンと約22万円のパソコンであれば、その性能差ははるかに小さいと感じるはずです。

また、製造5年以内の自動車に乗っているのなら、ステレオシステムやカーナビの地図を差分更新できるので、新車を買ったところで大した差はないでしょう。

当然ですが、お金に余裕がなければ、「コンフォート原則」を当てはめられない場合も出てきます。

余計な出費を抑えて貯金しようとすれば、高級な椅子や、より高性能なスマートフォンといった贅沢品を購入する自由はないかもしれません。

しかし、この原則は、何が贅沢で何がそうでないかを見直す際の手掛かりになります。

毎日の行動を振り返り、多くの時間を費やして取り組んでいる1日の行動をリストアップし、「コンフォート原則」を適用すれば、幸福度にもっとも大きな影響を与える分野に、確実にお金を注ぎ込めるようになることでしょう。

Jason Chen(原文

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