優れた商品やサービスを生み出しても、より多くの人たちに認知・理解してもらわなければビジネスとしては成立しません。しかし、もともとリソースの少ない中での挑戦を行うスタートアップ企業は宣伝や告知に資金を割きにくいのが現状です。

では、どのようにすれば伝えたい情報を、的確に届けることができるのでしょうか?

そこで、新機軸でプレスリリースの配信サービスに新たな可能性を開いたPR TIMES代表の山口拓己氏と、日本のスタートアップシーンに造詣が深いコワーキングスペース「StartUp44田(よしだ)寮」寮長の赤木優理氏に、スタートアップ企業がいかにして自社のアイデンティティやサービス・プロダクトを世の中に伝え、届けるべきかを聞いてみました。

伝える・届けるためには、まず意識改革から

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── まず、自己紹介を兼ねて、伝える立場、届ける立場で苦心されたことからお話をうかがえますか?

山口氏:私は2007年4月に総合PR会社ベクトルの子会社(現在のPR TIMES)を任され、いかに企業の伝えたい情報を的確に届ける新しい仕組みを構築するかという点では苦労しました。

当時の会社では、プレスリリースはなかなか読まれないという理由で「脱プレスリリース」を掲げていました。でも、熱い思いやビジョンがあっても風が立ちそうもない。さらに進むべきか、止めるのかを判断する状況になり、私は止めることを提案して代案を考えました。

それは、読まれない理由を解決して、読まれるプレスリリースをつくること。メディアはもちろん、もっと幅広い多くの人に読まれるものにすることを目指して、プレスリリース配信サイトを新たに立ち上げました。

赤木氏:私は渋谷で起業家と起業を志す会社員を対象にしたコワーキングスペース「StartUp44田寮」を2011年から運営。起業家のサポートや事業相談を行いながら、起業家と一般的な会社員の思考プロセスやスキルの違いを研究しています。

起業家のサポートで苦労するのがPRです。起業家たちは想いが強すぎて、伝えようしても偏った文章になったり、コンセプチュアル過ぎてわかりにくかったりといったケースが比較的多い。その点でPR TIMESは、具体的なプレスリリースの注意点など作成方法についてもサポートしてくれているので、起業家にとっては心強いですよね。

山口氏:サービス開始当初の利用者は大企業中心でしたが、今では裾野が広がり、プレスリリースを作成する初心者の方たちの利用が多数となっています。そこで、初めて書く人でも熟練した人と同じようなものが書けるように細部に至るまでこだわりました。

── StartUp44田寮からは、スクー、イエッティ、コンパシーなど、PR TIMESのサービスを利用している起業家が巣立っていますが、最初はどのような広報・宣伝活動をしていましたか?

赤木氏:起業当初はお金をかけずにSNSなどを利用して知り合いからファンを広げていく方法が一般的です。ただそれだけでは友達以外のより多くの人たちにリーチできない。そこで、SNSと平行してプレスリリースを使ったメディアの活用やダイレクトマーケティング、ウェブマーケティングなども行っていました。ただ、スタートアップ企業の利用できるリソースは限られています。自社のターゲットとなるユーザーに最適なPR手法を選択するために、彼らが強く意識していること、それは「顧客の3階層」という法則です。

情報を響かせるために必要な「顧客の3階層」とは?

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赤木氏:この法則はユーザー自身が自分のニーズをどこまで明確に理解しているかを3つの階層に分けて整理したものです。各階層に合わせて、どのようにアプローチすればマネタイズしやすくなるのかを考える目安ですね。

「不安」:漠然とした不安感。自分の不満は何が原因なのかも分かっていない状態。 「問題」:問題は何となく見えている。不満の原因は分かっているが、解決策に気づいていない状態。 「課題」:原因と解決策が分かっているが、自分だけでは解決策が実現できない状態。

不安から課題へ近づくほどユーザーは課題と解決策の理解度が深く、自分で解決策を用意できない場合は、企業のサービスや商品に対価を払い解決します。

山口氏:ユーザーがどの階層にいるのかは、どうやった判断すればいいんですか?

赤木氏:スタートアップが挑戦する新ビジネスはマーケットが未成熟なケースが多いのでユーザーも初期の「不安」レベルにいる場合が多い。逆に既存ビジネスのような成熟マーケットでは、テレビCMなどでユーザーの顧客教育が進んでいるので「課題」レベルにまで理解度が深まっています。優秀な起業家たちは自社のターゲットとなるユーザーの振る舞いや気持ちを理解することで、自ずとどのレベルにいるのかを探っています。ユーザーへの理解は商品やサービスの開発以上に重要だと思っています。

例えば、「名刺をビジネスのつながりに変える」をコンセプトにクラウド名刺管理サービスを提供する『Sansan』は、初期の頃からユーザーへのダイレクトマーケティングを重視し、ブログやSEO対策などで、ユーザーが「名刺 整理」「名刺 活用」などと検索すると上位にランキングし、どう問い合わせにつなげるかをブラッシュアップし続けています。既に名刺の整理で困っている人々に、具体的な整理・活用方法などをウェブマーケティング等を通じて直接的にアプローチしているわけです。

次に「問題」レベルにいるユーザーは、自分の問題を漠然と理解しているものの、仕事やお金や人間関係など抽象度の高い問題であることが多く、その中の何を解決すべきなのかが特定できていない状態だったりします。そういったユーザーには、まず抽象的な問題を整理してあげることが必要なので、編集力の高いメディアと連携してPRしていくことが有効になります。

参考になるスタートアップ企業は、『マネーフォワード』です。彼らは、「お金」という抽象度の高い問題を抱え、将来の資産形成の必要性を感じている男性サラリーマンをメインターゲットに、クラウド資産管理アプリを提供。マネーフォワードは初期の頃からメディアPRを重視しており、「家計簿男子」というキーワードをメディアと二人三脚で浸透させたり、「お金」にまつわるアンケート調査などをメディア担当者に定期的に提供するなど、メディアPRを上手くPR戦略に取り入れている好例だと思います。

では、「不安」にいるユーザーは、課題と解決策のいずれもわかっていないので、商品やサービスそのものでは興味を持ってもらえません。そこでどういうPRをするのか?

StartUp44田寮に、目の色や持っている服、好みに合わせてファッションコーディネートをしてくれるアプリを提供する『ベストスタイルミー』というスタートアップ企業がいます。彼らのサービスは一風変わっていて、メインターゲットはファッションに興味がある人ではなく、興味のない男性なんです。「ファッションに興味のない男性にファッションの楽しさを伝えたい!」というサービスなんですが、そもそも興味のない人はファッションの必要性を感じていませんよね。ベストスタイルミーはファッションに問題意識を抱えているユーザーではなくて、何か面白いことを求めているユーザー、つまり「不安」レベルのユーザーをターゲットとしているのです。つまり、このアプリは実用性というよりは「エンタメ」なんですね。彼らの場合は、ターゲットがリスペクトしてそうな人が推奨拡散するといった、人軸のPRを特に意識しています。

このように、ユーザーがいまどの階層にいるのかを注視して、ユーザーの意識に響く伝え方と有効な手法を見極めて届けることが重要だと思っています。

企業とメディア、記者、生活者を多面的につなぐ関係構築の場を目指して...

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── では、どのようにすれば伝えたい情報をターゲットにきちんと届けることができるのか。PR TIMESの届ける仕組みについて教えてください。

山口氏:まず、読まれるプレスリリースにするために配信サイトの操作性やUIなどに工夫を施しました。でも進めていくうちに重要なことは、"誰が何をするのか"というプレスリリースの内容そのものに価値を見いだせるかということに気づきました。

それ以降、私たちのサービスを使わなくても多くのパブリシティを獲得できるような企業、"あのようになりたい"という思いが先に立つ魅力ある企業に、どれだけPR TIMESを使っていただくかが第一義になっていきました。

現在、多くの企業に利用していただいていますが、これはFacebook上で友達が「いいね」をしたくなるような投稿をすることで、あることに興味がある人がさらに集まってくる仕組みと同じことです。

150219_prtimes_04.jpg▲PR TIMESの公式FacebookとTwitterには、カテゴリー別にすべてのリリースが投稿され、"いいね"や"Tweet" されることにより、発信者のフォロワーにリリースが届けられます。

また、PR TIMESでは、各種メディアのデスク宛とメディアに関わる会員記者・編集者約3000名宛の配信に加えて、一般ユーザーがPR TIMESの公式Facebookの記事を見て、気に入った企業のフォロワーになる「フォロー機能」などSNSとの連携強化にも取り組んでいます。

プレスリリースを元にメディアに掲載してもらうだけでなく、発信力の強い人たちや好奇心旺盛な生活者と企業が良好な関係でつながることがPR TIMESの大きな特長であり強みとなっています。

赤木氏:限られた人数で運営しているスタートアップ企業は、メディア関係者とのリレーション構築が一番難しい。彼らは人や時間を割けないので、「フォロー機能」で関心のある人たちと直接つながれるのはとても嬉しい機能だと思いますね。

良質なコンテンツに仕上げて、ときには思い切った戦術を...

── では最後に、プレスリリースを核として伝える・届けるためにおさえておきたいコツや戦術について教えてください。

山口氏:ポイントになるのは、プレスリリースを良質なコンテンツとしてとらえて作成することだと思っています。また、単に配信するだけではなく、配信したときの社会の反応に耳を傾けて、それを次のアクションに活かしていくことも大切です。広告とは違い、PRは100のことを200にすることはできません。逆に50しか伝えられないこともあるわけです。

そこでPR TIMESでは、プレスリリースの書き方をサポートしたり、フレキシブルなデザインが可能となる仕組みを用意しています。さらに、「どういうURLだとクリックされやすいか」「テキストの文字量はどの程度が最適か」「何曜日の何時頃に配信すると効果的か」など、分析したデータも提供しているので、ぜひ活用していいただきたいですね。

赤木氏:スタートアップ企業は、PRについて知見が蓄積できていない場合が多いので、サービスやナレッジを共有してくれることが素晴らしいなと思います。

山口氏:多くのスタートアップ企業がうまくPR TIMESを活用してくれているので、さらに身近に感じられるようなものにしていきたいと思っています。

赤木氏:PR戦術例として面白かったのが、StartUp44田寮出身で無料のオンライン学習サービスを展開しているスクーです。自社のコンセプトを伝えるために、1週間連続でプレスリリースを配信したことがありました。「スクーという会社のサービスが、こんなことをしようとしている」というイメージを刷り込むためです。

山口氏:すごく面白い考え方で、情報が溢れている時代に忘れられないぐらい集中的に情報接触を促すことは思い切ったやり方ですね。

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条件をクリアすれば無料でPR TIMESのサービスが利用できる!

PR TIMESでは、スタートアップ企業が下記の2つのミッションをクリアすると対象のプレスリリースが無料になるキャンペーンを開催中です。

【 PR TIMES スタートアップチャレンジ 】

●参加条件

・設立年月が24カ月未満で上場企業の子会社でない企業

●ミッション

・プレスリリース配信後、24時間以内に「企業のフォロワー数」を最低10人獲得すること。

・配信後24時間以内に、当該リリースのユニークユーザー数が500人以上になること。

※上記2つの条件をクリアできなかった場合は、PR TIMESで1回のプレスリリースを配信する料金/3万円がかかります。

詳細はこちらをご覧ください。

企業が自社の商品やサービスの認知・理解を浸透させ、購入・利用へと促進させる方法はいくつもあります。ただし、伝えたい情報をターゲットにしっかり届ける方法は、そうたくさんはありません。

そのなかで、高い頻度で情報をターゲットに届けるだけでなく、企業との継続的な関係性を新たに創出するPR TIMESは、これまでにない大きな武器として活用できそうですね。

「PR TIMES スタートアップチャレンジ」に参加して、パブリシティを獲得するためにどうするか、メディアとどうつきあうべきかを体感してみてはいかがでしょうか。

PR TIMES

PR TIMES スタートアップチャレンジ

(文/香川博人、写真/木原基行)