古代ローマと日本を「風呂」で繋ぐ奇跡のマンガ「テルマエ・ロマエ」のマンガ大賞2010、受賞おめでとうございます。マンガ大好きFP山崎です。

さて、今回は「良いメンタルアカウンティング」を勧めたいと思います。お金を管理し貯められるようになるために、「上手に自分をだます」方法として、行動ファイナンスのテクニックを応用してみたいと思います。

いずれも、ちょっとしたやり方でお金を貯めるヒントですので、だまされたと思ってチャレンジしてみてください。

ポイントは以下のとおりです!

 ■悪い「メンタルアカウンティング」

メンタルアカウンティングというのは行動ファイナンスという研究分野で用いられる用語です。「心の会計」と訳されることもあります。

一般にメンタルアカウンティングは、ネガティブな形で紹介されます。例えば、複数の口座の存在が非合理的な区分になっており、効率的な資産管理を阻害しているようなケースです。住宅購入資金の500万円は手をつけず(金利は1%にも満たない)、新車購入資金の200万円は全額カーローンにする(金利は3%前後)としたらどうでしょうか。いったん住宅購入資金を減らしてでもカーローンの金利を払わないほうが得になるのですが、「これは住宅購入資金!」という気持ちがあるので、合理的判断が難しくなることはよくあります。

お金はお金ですから、色をつけずに全体で管理すればいいわけですが、それが難しいというのがメンタルアカウンティングの指摘するところです。

確かに、メンタルアカウンティングが悪い効果をもたらしているのであれば、これは確かに取り払わなければいけない壁と言うことができます。しかし、メンタルアカウンティングが良い効果をもたらすとしたらどうでしょうか。

この場合は無理に取り払うのではなく、むしろ有効に活用してみたいところです。私がよく資産管理やマネーアドバイスで指摘するのは、非合理的なやり方が結果としてうまくいくきっかけになることもある、ということです。そこで、「良いメンタルアカウンティング」を考えてみたいと思います。

■良いメンタルアカウンティングの例

「良いメンタルアカウンティング」をいろいろなシチュエーションで考えてみると、「貯める」「崩さない」という局面に役立ちそうな気がします。例えば、以下のようなシチュエーションでは良いメンタルアカウンティングといえそうな気がします。

1)崩したくないお金を、分けて隠す

お金が貯められない理由として「口座は1つ」というものがあります。こういう人は、給与振込口座の残高が気がつけば10万残っていて、あっという間に50万円や100万円に増えていく、ということは絶対にありません。人は給与振込日前日にある残高は使い切りたいと考えるのが本能だからです(そうでしょ?)。

合理的かつ理性的な人間であれば、どの口座にお金を入れていようがお金を貯める必要性があれば貯められる、ということになりますが、実際はそう簡単な話ではありません。であれば、貯めたいお金は給与振込口座(その人のメインバンク)に入れっぱなしにしてはいけないわけです。自分の財産合計は同じであっても、「メインバンク10万円」と「メインバンク8万円、貯蓄専用口座2万円」は全く意味が異なります。後者はなぜか残せるものなのです。

銀行口座は必ず2つ以上作り、どちらかをメインバンク(日常使い)、どちらかを貯蓄専用口座としてください。そして、貯めたいと考えるお金は貯蓄専用口座に移しておくのです。

私はメインバンクに10万円以上入れておくことはほとんどありません。残高があると、つい気持ちがゆるんでしまうからです。メインバンクは基本的に余計なお金を入れておかない。これは「良いメンタルアカウンティング」だと思います。

2)財布にお金をいれない(ATMでも少なめにおろす)

銀行口座にお金があるのと、財布にお金が入っているのとは合計額として考えればまったく同じです(銀行にあれば利息がつきますが)。しかし、手元の財布に紙幣がたくさんあると、つい使ってしまうことはよくあります。

財布にたくさんのお金を入れない、ということは無駄遣いをしない基本的テクニックのひとつです。最近は週末や年末年始でもコンビニ等を含めてATMが利用できますので、手元に多くの現金を持つ必要はありません。必要最小限にとどめておくことが大切です。

また、ATMでお金をおろすときも、実際におろそうと思う金額より少なめにおろすといいでしょう。1万円おろさずに8千円おろすくらいがいいのです。できることなら数千円ずつ必要なお金をおろしたいくらいですが、そこまでいくと面倒のほうが上回りそうですからほどほどにすればいいでしょう。もちろん、ATMの利用手数料は払わない(時間外手数料等)のは基本中の基本ですから、優遇サービスを手に入れておきましょう。

私は、基本的に財布に1万円以上入れません。飲み会の日もその日にお金をおろします。財布にお金が入っていると散財してしまいそうだといつも思います(オタクは誘惑が多い)。財布にお金を入れておかない、これは「良いメンタルアカウンティング」だと思います。

3)電子マネー、クレジットカードを極力使わない

あるニュースによれば電子マネーで買い物をする人は消費が軽くなる傾向があるそうです。これはあなたの無駄遣いが増えた分、お店が儲かるということです。クレジットカードも同様で、目の前でお金が消えていかないので、消費の実感が乏しく、つい使いすぎることがあります。

買い物の額は現金で払おうが、カードで払おうが同じなので、そういう判断の差が出ることは非合理的なのですが、同じ非合理的なら、自分が節約できるアプローチを選ぶべきです。つまり、いつもニコニコ現金払いを心がけるのです。

現金払いをすると、「お金を使った!」という実感が伴います。これが重要です。私もiTunesやPlayStationNetworkだと、クリック1つで買えてしまうので余計な買い物をしてしまう衝動を抑えることは難しいなといつも感じています。電子マネーやクレジットカードについては意識しすぎるくらい意識して利用をしたいものです。

オンラインショップは現金払いは難しいでしょうが、できるだけ現金払いを心がける、これも「良いメンタルアカウンティング」だと思います。

4)当日中におろせない口座にお金を入れる

その他、良いメンタルアカウンティング的に活用したいのは「証券口座」です。証券口座は株式や投資信託を購入するために欠かせない口座ですが、もうひとつ良いところがあります。それは、「証券口座に入れたお金はおろすのが面倒」というところです。

一般的な証券口座の場合、当日の午後3時頃までに出金指示をすると翌日、それ以降だと翌々日の出金になります。銀行のATMと同様にその場ですぐ出金できないわけです(証券会社のカードを作れば少し早められる)。

また、証券口座にある資金は、基本的に株式や投資信託に振り向けられていますが、これを売却の後、出金となるとさらに数日かかります(現金の受け渡しに日数がかかるため)。

もし、「日数がかかるのなら、無理におろすのはやめよう」という判断が働くのであれば、あまり合理的とはいえませんが、ムダな取り崩しを抑制できたことになります。

銀行でも個人向け国債や投資信託を購入しておくと、解約に時間がかかりますので、取り崩しに歯止めがかかります。基本的に貯めるお金は崩さないことが重要です。このように、解約に時間が少しかかり、おろすのが面倒な口座にお金を入れておく、というのはぜひ考慮してみるといいでしょう。これこそ「良いメンタルアカウンティング」ではないでしょうか。

非合理的なことは基本的に否定されるものです。しかし、非合理的なことをやった結果としてお金が貯まるのであれば、やってみればいいと思います(さすがに、占いに頼ったりするのは非合理的すぎますが)。みなさんもいくつか真似てみていただければと思います。

また、「私の良いメンタルアカウンティングはこれだ!」というアイデアありましたら、ぜひコメントを。またはTwitter: @yam_syun までメッセージをお寄せください。ご意見お待ちしています(お金の得する小ネタ、毎日つぶやいています)。

(山崎俊輔)